大東印刷工業株式会社

「私の仕事はあくまでも営業です。FileMakerなら営業の仕事の合間にカスタム Appを開発できます。最小の労力でも確実に効果が得られると思っています。
これまで、やりたいことが出てくるとFileMakerで実現でき、困ることはありませんでした。」

1人の社員が始めた紙の書類の電子化が全社の工程管理へと広がり、経常利益率の向上に大きく貢献

FileMakerで蓄積、分析したデータが、業務改善にとどまらず、利益率の上昇、意識改革、働きやすい環境への原動力に

大東印刷工業株式会社

  • 本社所在地
    東京都墨田区向島3丁目35番地9号

業種

  • 商業印刷物の企画・製造

概要

  • 大東印刷工業株式会社では、営業関連の書類を電子化するために1998年にFileMakerを使い始めた。最初は1人の営業社員が使い始めたものが、営業全員に、さらに全社に広がって工程管理にも活用するようになった。正確に細かく記録することで工程とコストが「見える化」され、社内コストが減少。経常利益率は大きく上昇し、リーマンショックなどの厳しい外的要因があったにもかかわらず、2016年には新工場竣工という大規模な設備投資を実現した。社員全員にコスト意識が根づき、時間外勤務が減少するなどの効果も現れている。

メリット

  • 営業事務の効率化にとどまらず工程管理に進化させたことから、収益体質をも大幅に改善。
  • 社員全員が情報を共有することで業務を改善し、共通認識とコスト意識を持てる。
  • 時間外勤務の減少や有給休暇取得率の上昇など、より働きやすい環境も実現した。

システム構成

  • FileMaker サイトライセンス63ライセンス
    (FileMaker Pro、FileMaker Pro Advanced、FileMaker Server)
  • Windows PC 54台
  • Mac 24台
  • iPad 5台

1998年、1人の社員がFileMakerを使い始めた

東京スカイツリーから徒歩数分の場所に、本社・工場、第一工場、第二工場の3棟を構える大東印刷工業株式会社。パンフレットやPOPなどの販促用印刷物や、冊子・マニュアル等の業務用印刷物の制作を主に手がけ、近年では顧客企業のマーケティングの企画から携わる案件も受注している。
大東印刷工業でFileMakerを使い始めたのは1998年のこと。1人の社員が自主的に、自分のために使い始めたものだった。それから約20年、FileMakerのカスタム Appは全社に広がり、会社の利益率を向上させ、社員の意識や働き方を変えるツールとなっている。



大東印刷工業株式会社
第一営業部 業務課 課長
中島章裕氏

最初は営業書類の電子化から

FileMakerを使い始めた「1人の社員」が、第一営業部 業務課 課長の中島章裕氏だ。中島氏は1997年に入社し、1998年ごろから本格的に営業の業務を始めた。するとすぐ、手書きの書類の多さに困り果てる。1日の配送伝票が数百枚にもなるなどたいへんな手間がかかるし、変更や書き間違いもある。大量の書類が溜まり検索もできない。何より、書類を書くことに時間を取られて本来の業務である営業ができない。そこで、学生時代に使っていたFileMakerで、配送伝票や見積書、仕様書を作成することにした。
従来のやり方を中島氏だけが変えることになるわけだが、「仕事が速くなるから」と上司に説明して承諾を得たという。そして実際、すぐに中島氏の仕事は劇的に速くなる。それを目の当たりにした周囲にも波及し、翌年の1999年には当時15人ほどいた営業職の全員がFileMakerを使うようになった。



工程管理にもFileMakerを使い始める

同社では、制作から納品までの全工程について、その案件を受注した営業担当者がスケジュールや収支を調整、管理する。そこで中島氏は、社外に支払うコストをデータベース化して案件と紐づけ、2000年ごろからは制作や印刷などの社内部門が紙で記録していた日報もデータベース化して工程管理をするというように、FileMakerのカスタム Appの利用を広めていった。
それ以来、社員全員が案件ごとに、収支や計画、進捗状況、所要時間など自分の担当業務に応じた情報をその都度カスタム Appで記録している。営業、デザイン、制作などの社員は、自分のデスクにあるコンピュータでFileMakerを使う。製版や印刷の現場では、機械のそばなどにコンピュータを設置してすぐ使えるようにしてある。断裁機には軍手を着けたまま操作できるコンピュータ用タッチディスプレイを取り付けている。

基本的には自分の工程の画面を見ながら仕事をし、所要時間などを入力するが、情報はすべてオープンにしているので他部門、他工程の状況を見て調整をすることもできる。
また毎朝、各部門の代表者が集まり、カスタム Appの画面をプロジェクタで投影しながらその日の予定を確認、検討する。情報を共有することで工程の抜けや無理を回避できるし、急な変更にも対応できる。


FileMakerなら最小の労力でも確実に効果が得られる

- 大東印刷工業株式会社 第一営業部 業務課 課長 中島章裕氏

約20年にわたってFileMakerを使い続けている理由を、社内システムをほぼ一手に引き受けている中島氏はこう説明する。「私の仕事はあくまでも営業です。FileMakerなら営業の仕事の合間にカスタム Appを開発できます。改修も楽です。最小の労力でも確実に効果が得られると思っています。運用上のトラブルがないことも助かりますね」。中島氏はFileMakerを大学時代から独学で習得してきたほか、FBAやファイルメーカー社のトレーニングに参加したり、ユーザーグループで情報交換したりしてスキルアップしている。FileMakerの使いやすさについて中島氏は「レイアウトの柔軟性やリレーションシップはFileMakerの特に大きな利点です。カスタム関数もとても便利ですね。データのネットワーク共有が簡単で、動作速度にも不満はありません。FileMaker Server は安定していてとても信頼しています。これまで、やりたいことが出てくるとFileMakerで実現でき、困ることはありませんでした」と語る。

工程管理から単品利益管理へ

営業業務の効率化を目的として始めたFileMakerによる電子化が、2000年ごろからは工程管理へ、さらに工程の「見える化」へとつながってきた。そして2003年には、FileMakerを活用して案件1つごとに利益高を管理する「単品利益管理」がスタートする。
紙の加工などを外注してその金額を支払うならそのコストは一目瞭然だが、社内のコストは明らかでなく、注目されていなかった。仮に営業担当者が無理なスケジュールを組んでしまい、制作部門が残業や休日出勤をしなくてはならないとする。実際には時間外手当などのコストがかかるが、その分は考慮されていなかった。社内コストを無視すればこの案件の利益高には問題がないように見えても、社外も社内のコストも含めた全体の損益としてはコストが高く、この案件は赤字かもしれない。
そこで、デザインは1時間あたりいくらというように業務ごとの単価を経営陣が決め、その金額にカスタム Appの日報に記録された実際の作業時間を掛け合わせて、社内コストを計算する。そして、見積(=売上)から社外へ支払うコストと社内コストを引いて粗利益高を算出し、営業担当者は案件ごとの粗利益高に責任を持つことにした。この「単品利益管理」の効果は絶大で、社内にさまざまな改革をもたらすこととなった。

営業担当者の意識が変わり、仕事が変わった

営業担当者は1件ごとの利益率アップを考えるうちに、多くのことに気づきアイデアが出てくるようになった。
まず工程に関心を持ち、無理のないスケジュールを組んだり手順や段取りを工夫したりする。
また、感覚や成り行きではなく、カスタム Appに蓄積されたデータに基づいて競争力と説得力のある見積を出せる。利益率が自分の評価に直結するため、金額的、時間的に無理な見積を出すことはなくなった。利益率の低い仕事、無駄の多い仕事を見極めて減らしたり、改善していくことができ、結果として社内コストは継続的に下がっていった。
適正な見積と高い利益率のために、営業と制作・印刷現場がコミュニケーションをとり、業務の最適化を目指すのにも効果的だ。例えば小型のパンフレットを作る場合、大きな紙にパンフレットを何枚も並べて印刷し、それを断裁して目的のサイズに仕上げる。パンフレットをどうデザインし、どう並べて印刷するかによって、断裁する回数は変わる。このデザインなら何回切るか、どれぐらい時間がかかるかを相談しなくては適正な見積は出せないし、制作部門では短時間でミスなく低コストでできる方法を工夫する。

制作部門にもコスト意識が浸透

このように、制作部門も時間とコストを明確に意識して業務の向上に取り組むようになった。これまでのデータをもとに今日の作業時間がどの程度になるかが計算され、目安としてカスタム Appに表示されるので、時間の無駄を減らすよう工夫もしている。また、あるスキルの低さがボトルネックになっていることがデータからわかれば、そのスキルのトレーニングをする。
さらに「多能工」の取り組みもしている。ある工程に2時間の空きができる予定だとしたら、その工程のオペレーターは2時間分の別の仕事ができるように、日頃から育成しているのだ。このようにして人的稼働率、機械稼働率を高めて、コストダウンにつなげている。
さまざまなデータが社内共有され、「会社の利益を上げる」という問題意識が共有されることで、営業だけでなく全員がコストを意識して仕事をしている。

経常利益率の向上に大きく貢献、設備投資にも踏み切れた

1998年にFileMakerを導入して営業業務の効率化と紙の書類の電子化は進んだが、会社の経常利益率はむしろ低下傾向にあった。ところが2003年に「単品利益管理」を開始したとたんに、経常利益率は大きく上向く。FileMakerで見える化したことにより、営業だけでなく全社員がコスト意識を持ち、それぞれが自分の持ち場で工夫しスキルアップした結果である。
2008年のリーマンショックにより一旦経常利益率は落ち込んだもののすぐに下げ止まりし、その後、2011年に東日本大震災が発生するという厳しい外的要因があったものの、大東印刷工業の経常利益率は上昇傾向上にあり、2016年には第二工場竣工という大きな投資も実現している。また、外注していた加工を自社内の設備で内製化すればコストが下げられるという考えで新しい機械も購入。これもカスタム Appで蓄積してきたデータを裏付けに利益率を「見える化」できたからこそ決定できたことだった。この投資により、その工程の利益率が向上し、しかも内製化したことにより付加価値の高い製品を顧客に提供することにもつながった。

社員の働き方にも良い影響が現れている

改善されたのは利益率だけではない。社内コストを減らすために無理なスケジュールを立てなくなったことは前述したが、これは当然、時間外勤務による社員の負担を大幅に減らすことにもなった。
作業時間を正確に記録、分析することで多能工を活用しているのも前述の通りだが、これは「この人がいなければこの仕事が止まってしまう」のではなく、別の人がカバーできるということでもある。したがって、有給休暇の消化率も上がったという。
また、急な事情で営業担当者が出勤できない場合、社外からVPNでカスタム Appにアクセスできるようになっているので、その日の予定の確認や調整をしたり、進行管理を他の人に依頼したりすることもできる。依頼された側も、社内でネットワーク共有された カスタム App に情報がすべてまとまっているのでスムーズに引き継げる。

今後もデータの精度を上げ、活用範囲を広げていきたい

今後のFileMakerの活用について中島氏は「現在、多能工を推進し、部門を横断して働くことが増えてきたので、部門によって異なっている日報を同じ形式に統合し「単品利益管理」の精度をさらに向上させる予定です。また、入力の精度や運用を定期的にチェックして カスタム App の改良を続けます。そうすれば、利益率はまだまだ向上します。そして今後は、人事の査定にもFileMakerを活用したいと考えています」と語る。
大東印刷工業はおよそ20年間にわたってFileMakerを活用しながら、効率の良い業務、利益率の高い経営体質、付加価値のある印刷製品の企画・製造、各工程の情報をオープンにして共有し業務全体を改善をしていく企業文化、社員が働きやすい環境へと進化してきた。今後もFileMakerのカスタム Appはさらに充実し、業務や働き方の改善がさらに実現していきそうだ。

Close

大東印刷工業株式会社

FileMaker カスタマ・ストーリー

活用事例を見る