泉南新家クリニック

FileMakerとiPadを活用した透析業務支援システムにより、患者とのコミュニケーション活性化、病態観察やフットケアなどの患者ケアが充実され、業務の効率と質が向上

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透析治療にかかわる様々な情報を管理する透析業務支援システムをFileMakerで構築

FileMakerとiPadの活用で透析業務の効率化によりフットケアなど患者ケアの充実を実現

泉南新家クリニック

  • 大阪府泉南市新家1801

概要

  • 透析業務は多岐にわたり、記録・管理すべき情報も多い。そのため透析業務に携わるスタッフは事務作業等も煩雑で多くの時間が費やされるのが課題。泉南新家クリニックでは、情報管理主任が自らFileMakerを用いて開発した透析業務支援システム「dottoHD」を運用し、透析業務の効率化を実現。また、iPadの活用により、ベッドサイドでの業務を活性化した。

業種

  • 医療・福祉

ソリューション

  • 患者管理情報(患者基本情報・透析条件・透析スケジュールなど)、各種マスター(原疾患・透析装置・至適透析項目など)、各種業務ファイル(透析サマリー・血液検査データ管理・フットケア管理など)等のデータベースをFileMaker Serverで管理。
  • FileMaker GoをインストールしたiPadを利用し、ベッドサイドでの運用を実現。特にフットケア管理をベッドサイドで患部写真を含めた記録等が実施できる環境の構築。

メリット

  • 透析業務支援システムにより、帳票作成・管理など事務作業を削減し、業務効率化と転記ミス等の防止により安全性確保を実現。
  • 業務効率化により、患者さんに接する時間を増やし、コミュニケーションの活性化、病態観察、フットケアなどの患者ケアを充実。
  • iPadの活用によりフットケア管理などベッドサイドでの業務を効率化。

透析業務のシステム化で効率向上と安全性確保

泉南新家クリニック
透析部長
臨床工学技士
高木 堅二 氏

泉州・大阪府泉南市で2007年に開業した泉南新家クリニックは、内科、リウマチ科、アレルギー科、人工透析を診療科目とするクリニック。特に透析センターは、透析ベッド24床を有し、臨床工学技士2名、看護師5名(常勤)体制で地域の透析患者さんを支えている。

腎臓の機能低下が常態化する慢性腎不全。それが悪化すると腎臓がほとんど機能しなくなり、血液のろ過が十分に行えず水分や老廃物のコントロールができなくなってしまう。生命を維持していくために、人工的に血液の浄化を行う必要がある。それが透析療法(人工透析)と呼ばれるもので、一般的に行われているのが血液透析である。透析患者さんは週3回、1回約4時間かけて血液透析を行っている。

透析業務は、透析回路・ダイアライザーといった人工腎臓の準備、穿刺業務、透析中の定時の点検、水処理装置の点検、返血業務、消毒、翌日の準備など多岐にわたり、様々な記録を作成・管理しなければならない。「透析業務にかかわるスタッフは、限られた時間で多種多様で煩雑な業務をこなさなければなりません。それゆえ業務効率化と安全性確保のために情報の一元化は非常に重要です」。臨床工学技士で透析部長を務める高木堅二氏は、透析業務支援システム開発の背景をこう説明する。

実は高木氏は、以前に勤務していた透析施設でFileMakerを用いて自らシステムを開発・運用していた。泉南新家クリニック開業当初は、その透析業務支援システムをベースに運用していた。後にFileMakerに詳しい現情報管理主任の田代庸平氏が入職したのを機に、いっそうのシステム改良を続け、一新されたのが現在運用している透析業務支援システム「dottoHD」(ドットエイチディー)だ。

FileMakerプラットフォームを用いた透析業務支援システムは、スタッフを煩雑な事務作業から開放し、業務を効率化するとともに、より安全な透析を支援します。業務の効率化により患者さんに接する時間が増え、その時間をフットケアに充てるなどケアの充実につながっています。

— 泉南新家クリニック 透析部長・臨床工学技士 高木 堅二 氏


iPadとFileMaker Goで誰もが抵抗なく簡便に操作できるツールが実現

泉南新家クリニック
情報管理主任
臨床工学技士
田代 庸平 氏

メーカー製のパッケージ透析業務統合システムもあるが、実際に導入・運用している施設は3割に満たないと言われている。普及が芳しくないのは、システムが高額で小規模な透析クリニックにはコスト負担が大きいこと、また、システム操作に対するITリテラシーが追いつかず、看護師の抵抗感が大きいといった理由があるからだ。そこで、dottoHDの開発にあたり田代氏は、「低コスト」「ユーザーライク(使いやすさ)」「iPadの機動性を活用したベッドサイドでの運用」を基本コンセプトにしたという。

「透析業務では確認・参照すべき情報(項目)は多岐にわたるため、画面レイアウトが煩雑になったり、操作が複雑になりがちですが、あえてシンプルかつ斬新なレイアウトで、スタッフのITリテラシーが高くなくとも、容易に運用できるようこだわりました。レイアウト作成が自由自在で、カスタムアプリケーション作成に長けたFileMakerだからこそ実現できたことです」(田代氏)。

田代氏は、FileMaker Goの登場により、iPadとFileMakerの親和性は飛躍的に高くなったので、ベッドサイド業務で有効な使い方ができるのではないかと、早くから注目していたと言う。「ベッドサイドでデータの入力・参照が可能になり、いちいちナースステーションに戻って操作する必要がなくなり、システム操作の効率化と記載漏れをなくすことができます」(田代氏)と、iPad運用のメリットを強調する。

dottoHDでは次のような情報が一元管理されている:氏名や年齢、住所などの患者基本情報、感染症や病歴情報、透析スケジュール、目標体重や血流量、抗凝固剤などの透析条件、動脈と静脈をつなぎ合わせた血液の出し入れ口であるバスキュラーアクセス(VA)管理、看護計画、履歴情報、血液検査結果など。

至適透析画面 拡大表示

このほかdottoHDには、至適透析の条件を評価するために必要な透析効率、栄養状態を管理する機能なども実装されている。

「至適透析」とは、透析に関係する症状や合併症を起こすことなく、本来の体内循環に近い環境が得られて予後を伸ばす適切な透析条件。透析のやり方に絞って至適透析を考えるときには尿素窒素やクレアチニンなど物質除去を指標として評価するが、透析治療全体で見れば薬の量の調整や栄養管理など様々な要素から評価・適正化する必要がある。そのためのデータ管理としてdottoHDは重要な役割を担っており、評価に必要な血液検査データは、検査会社から届いた検査データから、dottoHDの患者マスターと照合して該当の透析患者のデータのみを取り込めるようになっている。

「全患者さんのデータの統計情報を抽出するのも容易です。一定期間で疾病の管理状態が悪い患者さんを抽出、例えば無機リンとカルシウムの指標から骨や関節破壊の合併症の危険性がある場合は食事指導や薬の量の調整などの介入を行います。指標データはグラフ表示して視覚的に患者状態を把握しやすく、回診の際などにiPadで表示して主治医の処方変更を仰ぐといった使い方をしています」(高木氏)。

業務効率化によりフットケアなどの業務の質向上を目指す

泉南新家クリニック
看護総師長
常國 哲朗 氏

同クリニックではdottoHDの導入により事務作業が効率化され、その分スタッフが患者さんと接してコミュニケーションが活性化されたことで、患者ケアの充実につながっている。特にフットケアが計画的に十分なされるようになったという。

「透析患者さんは末梢神経障害や動脈硬化症により、足の病変が起りやすくなっています。潰瘍や壊疽が原因で最悪の場合は足・指を切断せざるを得なくなることもあり、早期に足の血流障害を発見し、フットケアを施すことで病態悪化を防ぐことは非常に重要です」。看護総師長の常國哲朗氏は、フットケアの重要性をこう説明する。

iPadを利用してベッドサイド業務を充実させる目的の1つが、このフットケアの適切かつ効率的に実施できる環境を作ることだった。実際にベッドサイド業務にあたる看護師からもフットケアにおけるiPad運用の便利さ、効率的で確実なフットケア記録ができることに対する評価は高い。

患者さんに患部を撮影した写真を見せて説明

「以前はフットケア記録用紙に手書きし、患部を撮影した写真をプリントして貼り付ける作業が煩雑で時間もかかっていました。iPadを利用するようになって、その場で観察した記録を入力できるし、カメラ機能を使って簡単に撮影できるので、記録に要する時間が短縮されました。患部の写真を見せながら説明するなど、患者さんとのコミュニケーションにも有効に使っています」(看護師 前田淳子氏)。

「また、フットケア以外にも、透析開始前の観察や透析後の体重計測データもその場で入力できるので、事後の事務作業が大幅に削減されました。ベッドサイドでの患者さんの観察やコミュニケーションの時間がとりやすくなりました」(看護師 澤井広子氏)。

両氏とも、「パソコンは苦手で、運用前は不安を抱いていました」と振り返るが、実際にiPadを使ったdottoHDの運用にはすぐに慣れることができ、操作不安は取り越し苦労だったと言う。

透析施設へのdottoHD普及を目指して日々進化

災害対策画面 拡大表示

災害時の透析情報提供機能を組み込んでいるのもdottoHDの大きな特長である。自院における透析情報を患者さんに提供するだけでなく、災害対策機関への施設情報も提供できる。患者さんへ提供する情報は、患者基本情報をはじめ、原疾患、感染症、アレルギー、透析条件など。提供形態は、印刷した透析カード、メール、ファイル(CSV/PDF)の3つだ。データ更新された際に印刷したり、メール送信しており、患者さんは常に最新の透析情報を持ち、災害時に自身で身を守る手助けになる。

こうしたデータを他の透析施設でもそのままシステムに取り込んで利用できるよう、dottoHDそのものの提供も視野に入れている。「透析研究会や学会でdottoHDの運用を紹介しています。それを見た医療機関から試しに使ってみたいとご要望があって、大阪、和歌山、兵庫の3県の透析施設で試験運用を開始しており、広がりを見せています」(高木氏)。こうした他施設からのフィードバックも受けて、より便利、より使いやすく日々進化させているという。「現場の声を即座にシステムに反映し、ツールを拡張したり、改善したりできることはユーザーメードシステムの大きな利点。FileMakerだからこそ、実現可能なことです」(田代氏)。

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