ユーザーインタビュー

舞台芸術を支える名脇役、“劇場管理システム”

500箱の保管スペースが、FileMaker Pro によるデジタル化で10分の1に

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紙の情報をすべてデジタル保存

「現場の意見を取り入れながら」システムを構築したという「世田谷パブリックシアター」の劇場管理システム。システムの導入後、「もともと全部がばらばらな紙の状態だった」紙ベースの資料はどのようになったのでしょうか。

「ボックスの中の量は公演によって異なるのですが、A4のファイルボックスが1年間で50箱ぐらいになります。ですので、開業から10年経った頃には500箱くらいになってしまいます。しかし、システムの導入で過去10年分保管していた紙ベースの資料は破棄してしまい、その後は1年間ぐらい保管してから廃棄することにしています」と矢作氏。

これなら保管は常時50箱程度。システム導入によって、驚くほどの効果が出たことがわかります。しかし「紙ベースの資料はスキャンをしてすべてデータ化している」ため、その作業が大変なのではないのでしょうか。矢作氏は、図面に関しては「そもそもがペーパレスになってきている」と打ち明けます。

「図面関係は、打合せなどでは紙に出力されたものの方がわかりやすいと思うんですが、今はCADデータなどで図面をおこすので、データをそのまま保管するという方向になってきています。図面を描く環境もそういう意味ではデジタル化されているので、紙で保管するものは減っている状況です」。

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では、実際にFileMaker Pro の情報はどのように全体で共有しているのでしょうか。
「基本的には FileMaker Serverを導入しています。サーバの導入が今回のシステム構築ができるようになった一番大きいところですね。単純なファイル共有だけではなかなか難しかったところを、サーバを導入することによって、技術スタッフ20人全員と、制作スタッフ30人のうちの数人が、 FileMaker Serverを使える状況にしました」。

更に、データ化のポイントについて、矢作氏はこう語ります。
「利用団体から送られて来る紙媒体は、こちらが用意しているフォーマットに沿っているものとは限らないんですね。そこで、その紙媒体の情報を、こちら側のスタッフと打合せをし、ヒアリング、確認をした上で、 FileMaker Pro のフォーマットに落として劇場のスタッフに情報を行き渡らせるようにしています。以前はExcelのフォーマットにしているだけだったんです。そのフォーマットを印刷して、そこに手書きで書く人、内容も入力して印刷する人とばらばらにやっていく状態でした。印刷したものを紙ベースで保存することだけを目的としていたんです」。

以前は「印刷のためだけの入力がおこなわれていた」が、データ化の目的が根本的に変わったといいます。

「 FileMaker Pro を導入することで、まずデータの入力が先にあり、入力後、データを印刷して現場のスタッフに渡せるようにしました。実際に現場で使われた後は、個々のスタッフはその印刷されたデータは恐らく捨ててしまっていると思うんですが、データはきちんと残る形になりました。こうやってデータ化して残すということで、とても便利になったと現場スタッフに喜ばれています。実際に打合せをするスタッフは1人なのですが、現場の作業は10人くらいでやります。そこに、それぞれの公演に関わるテクニカルな情報、スタッフの名前や連絡先などの舞台関係のデータ、照明関係のデータ、音響関係のデータなどを流すに当たり、 FileMaker Pro を使ったことで、これらの情報が非常にシンプルな形で伝達できるようになりました。作業そのものが簡略化できるようになったのは大きいですね」。

その一例として、FileMaker Pro の情報を現場にシンプルな形で伝達するため、矢作氏自ら「印刷用シート」を作成しました。

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「それぞれのセクションの人間に、その人が必要な情報が印刷されたものを渡していっています。それを持って各スタッフが現場に行く形をとっています。結局は現場に行って作業をするタイプの仕事なので、現場で図面を見ながら作業をしていくんです。なので、手元にどうしても紙に印刷されたものが必要なんですね。だから公演が終わった後にもデータがきちんと残っているというのが、FileMaker Pro を導入したうえで大きなメリットになっています。 FileMaker Pro によってデータとして蓄積しやすくなったということですね」と満足げな矢作氏。「印刷フォームがきれいに作れる点も、 FileMaker Pro の魅力ですね。他にも、招待状やプレスリリース、チラシ配送等の宛名ラベル・送り先リストの管理や宣伝用資料の管理にも FileMaker Pro を使っています。」

狂言にこそデータベースが有効

ところで「世田谷パブリックシアター」は、芸術監督が狂言師の野村萬斎氏ということで知られていますが、狂言にこそ「情報の蓄積が有効」だと矢作氏はいいます。

「たとえば「狂言劇場」というのがあり、現代劇用の劇場の中に能舞台をどのように設置すればいいのかというのを考えて、オリジナルの能舞台を作ったんです。これまでに3回、シリーズをやっています。その演目をやるにあたって、1回やってこの部分を直そう、2回目もやってもう少し直そう、といったように何回かやって試行錯誤できるのも、過去のデータがきちんと蓄積されていて、それを見ながら、前回はこうだったから今回はこうしよう、とブラッシュアップできるからなんです。

一番大きいのは舞台と客席の関係性なのですが、どこまで客席に入り込んでいくのか、どこまで離すのかといったあたりを、過去のデータを参照しながら話し合っていくことはありますね。野村萬斎氏に関しては、データの蓄積のプロセスに関わっていただくというよりも、こちら側がその話を受けて、データを取り出して提案するということで非常に有効になっているんです」。

最後に、今後システムをどのように拡張していくご予定か、矢作氏にうかがいました。

「劇場を運営していくにあたって重要なことは、結局、これまでおこなわれたことに対しての情報や状況をいかに蓄積していくかなんです。演劇などの舞台芸術作品は貴重な文化遺産ですから、資料などをきちんと保存して後世に伝えていくことが、ひとつの使命であると考えています。後世に残すにあたって一番大変なのは映像資料なんですよね。ビデオテープをどうするのか、目下苦労しているところです。当劇場では、DVDに焼き直しの作業を進めています。インデックスをきちんと作ってデータベースの中にいれ、そこを参照していくような形にしていきたいなと考えています。また、ひとつの公演が無事終わるとつい安心してしまいがちですが、一歩間違えば危険が伴う舞台の世界ですから、次回に同じ失敗を繰り返さないように、今後、トラブル事例もデータベース化していきたいですね」。

ばらばらな紙の情報をデーターベース化した「世田谷パブリックシアター」の劇場管理システム。ユーザーの想像力と FileMaker Pro の柔軟性により、これからも更なる進化を遂げることが予想されます。

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プロフィール

世田谷パブリックシアター

写真

1997年4月、東京都世田谷区の三軒茶屋にオープン。高水準の機能と設備をそなえた、演劇と舞踊を中心とした音楽などの舞台芸術のための劇場。狂言師の野村萬斎氏が芸術監督を務めることで知られている。

http://www.setagaya-pt.jp/

システム構成

    • Windows XP
    • Mac OS X
    • FileMaker Pro
      30ライセンス
    • FileMaker Server
      1ライセンス

FileMaker カスタマ・ストーリー

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