信州ハム株式会社

“システム開発業者に外注すると高額な費用がかかりますし、自社独自の工程に合うシステムの構築は難しい。そこで『小さく導入して大きく育てる』ことのできるFileMakerの導入を決めました”

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基幹事業であるハム・ソーセージ製造の生産工程を管理するシステムをFileMakerプラットフォームで内製化

生産工場に配備されたiPadから各工程の詳細なデータをリアルタイムで収集

概要

  • 旧システムで抱えていた次のような問題をFileMakerプラットフォームで作成した新システムにリプレースすることで解決:サポート期間が終了、生産品目の変更や事業の成長に合わせた柔軟な改変が不能、紙の日報からデータ入力する事務作業負担の増大、経営判断に必要な重要な情報(生産量、歩留まり、原価管理)を得るのに時間が掛かるうえ精度も十分でない。

業種

  • 食肉加工品の製造および販売

ソリューション

  • 製品の原材料である生肉の入荷・解凍から製造、包装までの工程をFileMakerベースの「新・生産管理システム」で管理。工場内のiPadから入力されたデータは、常にリアルタイムでWi-Fiを通じて接続したサーバーに送られて一元管理。歩留まりをリアルタイムに把握することや、工程の遅れなどのトラブルにも即時に対処することが可能に。

メリット

  • 生産現場の見える化:歩留まりや原価管理のリアルタイム把握が実現。
  • フレキシブル対応:現場ユーザからのシステム改善要望や管理者からの機能追加依頼に柔軟に対応。
  • 初期投資を抑制:ロースハム、ベーコン、ソーセージと製品ごとに段階的に開発および稼働したこと、また内製化したことで実現。
  • ペーパーレス:手書きした紙からのデータ入力や再入力が不要。
  • 蓄積したデータを分析し、戦略計画や経営判断に活用。
信州ハム株式会社
代表取締役社長
宮坂 正晴 氏

「真田の郷」で高品質の製品を作り続ける信州ハム

2016年のNHK大河ドラマをきっかけに「真田の郷」として注目を集めた長野県上田市に、70年の歴史を持つ信州ハム株式会社の本社と上田工場がある。

代表取締役社長の宮坂正晴氏 が「多くの製品を作っていますが、中でも発色剤・着色料などの添加物を使用せずに1975年から製造している『グリーンマーク』シリーズと、本物の味を目指して開発した『爽やか信州軽井沢』シリーズは弊社を代表するブランドです。特にグリーンマークの売り上げは近年大きく成長しています」と語る通り、安全性と味の良さが消費者から高く評価されているメーカーだ。




信州ハム株式会社
経営企画部 部長(兼)社長室 室長
小口 昇 氏

「小さく導入して大きく育てる」システムを目指して

2015年にFileMakerによる新しい生産管理システムの開発を始めた背景を、経営企画部 部長(兼)社長室 室長 小口昇氏 に聞いた。「20年以上前に導入した基幹システムは、サポート期間終了やイレギュラーな生産への対応の難しさなどの問題が発生していました。しかも現場で紙に手書きされた日報の数値を2人の事務担当者が1日がかりでExcelに入力、さらに必要に応じて基幹システムにも入力するという手間もかかっていました。当然、生産量、歩留まり、原価などを把握するのに時間がかかり、精度も十分ではなかったのです」

開発にあたりFileMakerによるカスタム Appの内製化を選択した理由を、宮坂氏は「システム開発業者に外注すると高額な費用がかかりますし、自社独自の工程に合うシステムの構築は難しい。そこで『小さく導入して大きく育てる』ことのできるFileMakerの導入を決めました」と語る。




防水ケースの上からでも使いやすいカスタム Appを開発

製品には原材料である生肉の入荷・解凍から製造、包装、そして箱詰めして出荷という工程があるが、このうち生肉の段階から包装までをFileMakerのカスタム Appで管理している。社内にはFileMaker GoがインストールされたiPad Airが約50台あり、その大半は工場で使われている。FileMaker Serverは外部業者のクラウドサーバーで運用している。

各工程にiPadが置かれ、その工程での作業や計量が済むたびにデータを入力する。データは常にWi-Fiで接続されたサーバーに送られ一元管理される。

生肉や水、調味液などを扱うため、iPadは防水ケースに入れられ、各工程の機器のそばに設置されている。そこで、画面上の一つひとつのオブジェクトは大きめに作られ、チェックボックスやポップオーバーといったFileMakerの機能を有効に使って、見やすく入力しやすいカスタム Appにしてある。肉の部位を表すイラストや工程の進捗状況を示す大きなアイコン、カラフルな色使いなど、親しみやすい画面構成も製造現場にスムーズに受け入れられた要因のひとつといえるだろう。

整形部門で原材料の重量を記録している従業員からは「以前はホワイトボードに数値を書いた上で、あとで計算する必要がありました。このシステムになってから計算の手間やミスがなくなりました」との声が聞かれた。

工場には中国やベトナムなど海外出身の従業員も多いが、この新生産管理システム導入以前は紙に手書きしていたということと、見やすく入力しやすいUIであることから、カスタム AppのUIが日本語でもまったく問題ないという。

生産管理の事務所には、SHARP製の70インチのBIG PADが設置されている。工場で入力したデータをもとに、製造の進捗が工程ごとにひと目でわかるように表示されているので、状況や遅れなどのトラブルをリアルタイムで知ることができる。BIG PAD用に何か特別に開発したものはなく、iPad用に作成したレイアウトをそのまま表示している。

株式会社信州ハム・サービス
取締役 情報管理部 部長
土屋 光弘 氏
信州ハム株式会社
生産管理部 主任
織部 航 氏

初めてFileMakerを使い、半年足らずで現場テストに至った

このカスタム Appの開発をしているのは、生産管理部 主任の織部航氏と、関連会社である株式会社信州ハム・サービス 取締役 情報管理部 部長の土屋光弘氏だ。

2015年4月にFileMakerによるシステムを提案したのは土屋氏だった。「私は以前FileMakerを使っていましたが、しばらくブランクがありました。2014年のFileMakerカンファレンスに出向いたところ、食品メーカーの事例が目に留まり、FileMakerならシステムを構築できそうだと考えて提案をしました」(土屋氏)。

一方、かねてから生産管理システムの刷新を手がけたいと考えていた織部氏は、VBAやC言語の経験はあったものの、FileMakerには触れたことがなかった。

土屋氏と織部氏はファイルメーカー社の公式トレーニング教材である『FileMaker Training Series』で自学自習をした後、提案の翌月の5月にファイルメーカー社の開発パートナー企業のひとつ、株式会社U-NEXUS(長野市)が主催するトレーニングを4日間受講した。このトレーニングは、受講者のニーズに応じて日数や内容をカスタマイズし、U-NEXUS社が持つ開発のプロのノウハウでカスタム Appの内製化を支援するものだという。

このトレーニングと同時にロースハム製造のプロトタイプ作成を開始。同年10月には、iPadを利用するための工場内Wi-Fiの工事も完了して、現場テストが始まった。FileMakerを使い始めてから半年足らずで、現場テストができる状態のカスタム Appができたことになる。土屋氏は「プロトタイプを短期間で作れたのが良かったと思います。現場で使ってもらうことで理解が進み、要望も出てきたからです」とFileMakerによる開発のメリットを語る。

その後、ベーコン製造のプロトタイプの追加を経て、2016年10月にハムとベーコンのシステムが本稼働。2017年2月にはソーセージのシステムも本稼働となり、新生産管理システムがひと通りそろった。

「シチズンデベロッパー」のメリットを活かしたシステム構築

数年前から「シチズンデベロッパー」という言葉を目にするようになった。これは、プログラミングやシステム開発の専門職ではない開発者を指す言葉だ。

開発の中心を担っている織部氏は、製造現場や生産管理に従事した経験がある。業務を熟知している社員がシステムを作り、さらにそれを実際に使う現場とのコミュニケーションを積極的に図ることにより、使いやすく最適なシステムを短期間で構築できるのがシチズンデベロッパーによる内製化の大きなメリットである。信州ハムのカスタム Appはこのメリットを形にしたものといえるだろう。

歩留まり、従業員の意識、トレーサビリティと多くの効果が得られた

製造業にとって歩留まりは、コストや生産計画、製造管理と改善、販売戦略など、多くの局面に関わる重要な数値である。しかし信州ハムの以前のシステムで把握できるのは、原材料と完成品から割り出した歩留まりのみだった。たとえば、ハムにする予定だった原材料を別の製品に回したり、仮にどこか特定の工程で歩留まりに影響を及ぼす事象があったりしても、それらを厳密には記録しきれていなかったからだ。新生産管理システムでは必ずすべての工程でデータを記録してから次の工程へと進むので、工程ごとの歩留まりが正確にわかる。しかも以前は歩留まりがわかるまでに数日から1か月ほどかかったが、現在はリアルタイムでわかるため、計画が立てやすく、もし問題が発生してもすぐに対処できる。

「工程ごとの歩留まりに関してはデータが蓄積され始めたところですから、今が『元年』と言えるでしょう。今後は前年比などの検討ができるようになるので、製造や販売の戦略にも有効です」(小口氏)

また、従業員の意識にも良い影響があるという。「重要な数値を自分でシステムに入力するわけですから、現場の参加意識やモチベーションが向上したと思います。システムを改善してほしいという現場からの声に迅速に対応できるのも、内製化の大きなメリットです」(宮坂氏)

そしてトレーサビリティの向上にも大きな役割を果たしている。「ある原料がどの製品に使われたか」と製造工程の上流から追跡することも、「この製品にはどの原料が使われたか」と下流から追跡することも、瞬時にできるようになったからである。

生産管理以外の可能性も広がる

新生産管理システムは、工場全体でまさに「小さく導入して大きく育てる」方向に進んでいる。

宮坂氏は「現在は包装までの管理ですが、今後は出荷先の小売店まで追跡できるようにしたいと思っています。より確実に店頭まで追跡できるトレーサビリティを確立して、お客様に安全な食品をお届けしたいからです」と言う。土屋氏によれば、包装部門からは資材の在庫管理の要望が、営業部門からも出荷先管理の要望が出ているそうだ。さらに商品開発室からも製品レシピを一元管理したいとの声が上がっている。

「生産管理がFileMakerで成功したのを見て、ほかの工程や部門からもシステムを開発してほしいという要望が多く寄せられています。これはとてもうれしいことです」と織部氏は言う。小口氏が「システム開発の要員を増やすことも会社としての課題です」と、また宮坂氏が「システムは発展途上です。これからも構築を進めていきます」と語るほど、信州ハムにおけるカスタム Appの可能性は大きい。

本事例の詳細を、FileMaker カンファレンス 2017の事例セッションにて、ご紹介します。

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