豊田信用金庫

渉外係やマネーアドバイザーが情報活用するために使用するカスタム App を FileMaker プラットフォームで構築し、iPad で運用しています。導入以来、業務効率化による時間短縮や顧客満足の向上、コミュニケーションの活性化など、多くの導入効果を上げています。

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情報の視認性や検索の利便性を高め、セキュリティにも十分配慮された FileMaker ベースのカスタム App が業務とコミュニケーションのあり方を変革する

業務の効率化と、顧客とのきめ細かく人間味あふれるコミュニケーションを実現。今後はさらに情報の可視化と経営強化につなげたい

豊田信用金庫

  • 愛知県豊田市元城町 1 丁目 48 番地

業種

  • 金融機関(信用金庫)

概要

  • 同金庫は、顧客情報の管理、顧客取引情報の検索・照会、訪問予定表の管理、渉外日報の作成・管理などの機能を備えた iPad 用のカスタム App を FileMaker プラットフォームで開発した。顧客情報は基幹システムと連動し、常に一元管理された最新のデータを iPad から参照できる。訪問予定を短時間で作成し、地図を参照できる機能は、多くの顧客のもとへ出向く渉外係に好評。セルラーモデルの iPad を使って訪問先にいながら顧客情報を確認できるため、問い合わせに即座に対応できる上に、最適な提案もできる。また、金融機関に求められる高度なセキュリティ対策も万全。今後は定型化しにくい情報の可視化や共有を、日々の業務に、そして経営にさらに活かしていくことを目指している。

メリット

  • 訪問予定表の作成や準備などの業務が効率化され、残業時間も削減された。
  • iPad から多くの情報を参照できるため、顧客への素早い対応やタイムリーな情報提供が可能。
  • 顧客の取引情報や属性情報が蓄積され、閲覧や検索も容易であるため、効果的なコミュニケーションをきめ細かくとることができる。

システム構成

  • FileMaker Server:1 ライセンス
  • FileMaker Pro Advanced:2 ライセンス
  • FileMaker Pro:2 ライセンス
  • iPad:約 300 台

導入の決め手は、優れたハードウェアである iPad と開発ツールとしての FileMaker の優位性

豊田信用金庫
理事長
黒田 連 氏

愛知県豊田市を中心に 38 店舗を展開する豊田信用金庫。2015 年 9 月 30 日現在の預金量は 1 兆 3,662 億円と、大手の信用金庫である。

地域に密着し、顧客とのコミュニケーションを重視し、地元に貢献する。日々の業務の中で「コミュニティ・バンク」を目指す豊田信用金庫は、38 店舗のすべてに合計で約 300 台の iPad を導入。豊田信用金庫の理事長、黒田連氏は「業務効率化やコミュニケーションのレスポンス向上など、職員はもとよりお客様からも導入効果について評価していただいており、自信を深めています」と述べている。

豊田信用金庫
常務理事
原田 宗三郎 氏

豊田信用金庫が iPad と FileMaker の導入に向けて動き始めたのは、2013 年前半だった。iPad と FileMaker を選んだ経緯を、常務理事の原田宗三郎氏はこう語る。「今後の情報活用や業務改善を考える上で、ハードウェアは iPad を使おうという意図がまずありました。自分自身で iPad を使ってみて、優れたポータビリティ、十分な処理性能、画面の大きさと美しさを備えていると考えたからです。また、取引先を回る渉外係やマネーアドバイザーが使うために iPad のセルラーモデルが必要ですが、3G 回線の通信速度では実用には耐えられません。4G が普及してきたことも、導入を進めるにはいいタイミングでしたね。では iPad 上でどういうシステムを作るか。いろいろ検討しましたが、見栄えが良くて使いやすいものを作れることや、短期間でプロトタイプを開発し稼動システムとして実装できるなど、開発ツールとしての優位性から FileMaker を選びました。iOS と FileMaker のセキュリティ関連機能があれば必要な対策が適切にできるとわかったことも、重要なポイントでした」

顧客を訪問する渉外係は基幹システムの情報を利用したり取引の処理をしたりするためにハンディ端末を持ち歩いているが、その画面はモノクロで、スマートフォンの画面よりやや小さい程度。事務部システム課次長の都築建雄氏は「ハンディ端末でお客様の昨日現在の取引情報を見ることはできますが、iPad と FileMaker を導入したため、大きな画面と最適化されたレイアウトで格段に見やすくなりました」と語る。



iPad と FileMaker で予測通りに短期間で稼働を開始

カスタム App のトップ画面

iPad と FileMaker の導入を正式に決定したのが 2013 年 11 月。1 つ目の店舗で約 10 台の iPad が使われ始めたのが 2014 年 5 月。正式決定から稼働開始まで、わずか半年だった。全 38 店舗、約 300 台の導入が完了したのは 2015 年 3 月。このように短期間で業務に導入できた背景を、開発を担当した株式会社寿商会 IT ソリューションチーム開発マネージャーの深澤真吾氏は「このシステムでやりたいこと、要件、設計が、開発当初からしっかりと決まっていたからですね。それに沿って FileMaker で順調に開発を進めることができました」と語る。都築氏は「順調に導入できましたが、一方で iPad と FileMaker なら短期間で稼動できるだろうと考えていたので、予測通りとも言えますね」と導入過程を振り返る。



iPad、iOS、FileMaker で何重ものセキュリティ対策を講じることができる

いかなる業種においても重要なことだが、特に金融機関にとってセキュリティ対策は最重要課題である。問題を起こさない、そして万が一の場合に追跡調査のできる仕組みづくりが求められる。

iPad にはパスコードロックがかかっている。iPad はすべてセルラーモデルで、外出先から携帯電話回線を利用する際に必ず安全な VPN 接続を通してサーバーに接続するために、iPad のホーム画面でアイコンをタップすると VPN 接続が確立した上でカスタム App が開くという流れが自動化されている。カスタム App の利用にはログインが必要だが、1 人に 1 台ずつ iPad が割り当てられていて、他の職員の iPad を借りて自分のアカウントでログインすることはできない。

データは信用金庫内のサーバーに保持されていて、iPad には一切データが残らない。そのため万一 iPad を紛失しても、そこからデータが流出することはない。

iPad でできることも制限している。たとえばメールアプリケーションを利用できないようにして、メールによる情報の流出や悪意のあるソフトウェアの侵入を防いでいる。カスタム App からのデータのエクスポートを禁止しているのはもちろんのこと、スクリーンショットも撮れない。必要に応じて、iPad の位置情報やカスタム App の利用状況を管理者側で取得できるようになっている。

このように、iPad、iOS、FileMaker のさまざまな機能を利用して、何重ものセキュリティ対策が講じられている。

訪問予定の作成も地図の参照も大幅に効率アップ

顧客情報の管理、顧客取引情報の検索・照会、渉外日報の作成・管理などの機能を備えたカスタム App の中で、日々数多くの顧客を訪問する渉外係から好評なのが、訪問予定表を作成し、地図を参照できる機能だ。

満期日や集金などの日程に基づいて明日訪問すべき顧客のリストを基幹システムから取得し、iPad のカスタム App に一覧表示する。アポイントメントをとった顧客を手動でリストに追加することもできる。そして、この顧客は 10 時、次の顧客は 10 時 15 分などと予定を立てて時刻を入力。入力完了後にソートすれば訪問予定表が完成する。カスタム App 導入以前は、訪問先一覧を紙に出力して大まかな時間帯を書き込みながら予定表を作っていたそうだ。渉外係からは「以前は訪問予定を作るのに四苦八苦していましたが、適切に作れるようになりました。残業時間が削減され、効率よく活動できます」との声が聞かれる。

リストが完成すると、Google マップにその情報を表示できる。訪問先にはピンが表示される。訪問順はピンに振られた数字で、訪問する時間帯はピンの色で、一目でわかるようになっている。ピンをタップするとゼンリンの住宅地図が表示され、場所を正確に調べられる(ゼンリンの地図情報を利用するには、地図サービスの利用契約が別途必要)。以前は、訪問先の場所を確認するために、各支店に備えられている住宅地図の印刷物を参照する必要があった。iPad で Google マップとゼンリンの住宅地図の両方を参照できるのも大きなメリットだ。

顧客とのきめ細かいコミュニケーションが顧客満足につながる

豊田信用金庫
システム課次長
都築 建雄 氏

「この FileMaker のカスタム App は他の金融機関に先駆けて大規模に導入したものなので、他との差別化も大きなメリットとして期待しています」と黒田氏は語る。どのような差別化なのだろうか。

都築氏の「もともと私どもは、地域密着で頑張っていこうという金融機関です。iPad と FileMaker の導入により、1 軒でも多くのお客様のところへ回れるようになり、それぞれのお客様に対してより深くお話ができるようになっているし、これからももっとできるようになっていくと思います」という言葉にもあるように、導入のメリットは効率だけではない。顧客とのコミュニケーションにも FileMaker のカスタム App が役に立ち、今後さらに力を発揮することが期待されている。

顧客からの相談に乗るマネーアドバイザーは「お客様から現在の残高や株価などを質問された時に、いちいち本部に問い合わせることなく、iPad で必要な情報をすぐに調べてお答えできるようになったのが便利です」と語る。渉外係も、必要なデータを一覧で確認しながら顧客と話ができる。顧客情報は基幹システムと連動しているので iPad から最新の情報を参照できるし、電子ペーパー化されたパンフレットやインターネットに公開されているマーケット情報なども iPad で閲覧できるからだ。

顧客訪問時でも、必要なデータにすぐにアクセスできる

このように、取引に関して適切でタイムリーな会話や情報提供ができるようになったことには大きな意義があるが、それだけではない。「お客様の情報を iPad の画面で見た時に、その方のお誕生日が来週であることがわかり、それをきっかけに話が進むこともあります」とマネーアドバイザーが語るように、iPad に情報を集約し見やすく表示することで、顧客一人ひとりに応じてより深いコミュニケーションをとることができる。顧客と話した内容や顧客の家族の動向なども記録し、すぐに参照できれば、次回の訪問や相談の際にどれほど役に立つかは想像に難くない。「もちろん職員各自の頭の中には、それぞれのお客様に関する情報があります。それを FileMaker のカスタム App を使って“見える化”し、質を上げていこうというのが、この取り組みなのです」(原田氏)

情報の可視化と共有が組織を強くし、他との差別化になる

数値として記録されない情報の可視化には、現在担当している顧客とのコミュニケーションが充実するということのほかにも、さまざまなメリットがある。たとえば、渉外係は概ね 2 年ほどで人事異動により担当が変わるが、その際にも顧客に関する情報が引き継がれる。ある支店で口座を作った顧客が別の支店の担当地域に転居した場合などにもフォローアップできる。新規顧客や、既存顧客との新たな取引の開拓にも役立つ。顧客とのやりとりの記録が PDCA サイクルのための貴重なデータとなり、渉外係自身のステップアップのみならず、組織全体の業務改善や業績向上にもつながる。

担当が変わっても、情報の引き継ぎがスムーズ

「取引のデータは基幹システムによってすでに管理されていますし、ハンディ端末などを使った合理化も図られています。iPad を導入したのは、単に合理化のためではありません。勘定系のシステムや定型フォーマットでは蓄積や共有が難しい情報を扱えるようにしたかったのです。FileMaker ならテキストフィールドに自由記述で入力でき、思いついた語句で検索できる。そして組織全体でそのような非定型の情報を共有できる。今まで手つかずだった分野に取り組み始めたと考えています」(原田氏)

このような情報の可視化、活用、共有が、iPad と FileMaker を導入した意図であり、これからもっと推進していきたいという展望がある。この領域に関しては現在のシステムが完成形ではなく、これからさらに進化させていきたい意向だ。たとえば、取引に関しては当然すべてもれなく記録しなくてはならないが、コミュニケーションのための情報の入力は必須ではない。それを入力する職員のモチベーションをどのようにして上げていくか。人事考課との連動なども考えられるが、「カスタム App の工夫によってモチベーションを上げることもできると思います」と深澤氏が語る通り、カスタム App のさらなる進化もこの展望の実現に寄与していくことだろう。

「情報を蓄積していくにはコストがかかります。しかしその情報を何度も有効活用することができれば、コストは相対的に下がります。他の金融機関との差別化や業績の向上にもつながります」(原田氏)と、iPad と FileMaker には長期的、戦略的なツールとしての役割が期待されている。

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