株式会社ヤッホーブルーイング

飲食店向けにビールを充填して出荷する樽の管理システムに FileMaker ベースのカスタム App を導入することで、それまで 1 か月に 20 個ほど発生していた樽の紛失がほぼ無くなりました。さらに、樽の動きを把握できるようになったことで、より正確なビールの生産計画が可能になりました。

ビデオを見る

管理の正確さ、省力化、スピードアップを目指して導入した FileMaker ベースのカスタム App で懸案だった樽の紛失が劇的に減少

樽の出荷から返却の業務に特化したカスタム App が樽の紛失による経費を大幅に削減。この成功が正確な生産管理にも、さらにはスタッフのモチベーションの向上にもつながっている

株式会社ヤッホーブルーイング

  • 長野県軽井沢町長倉 2148

業種

  • クラフトビールの製造および販売

概要

  • ビールを充填して飲食店に出荷される樽は空になったら醸造所に返却されるが、以前は返却先の誤りや返却の遅れによって多くの樽が紛失していた。そこでバーコード付きのシールを樽に貼って出荷する方法を採用。樽を管理する部門では、樽が返却された時にシールをバーコードリーダーでスキャンするだけで、どの店からいつ、どの樽が戻ってきたかを素早く正確に iPad 上のカスタム App に記録できる。

メリット

  • ビール出荷用の樽の紛失が大幅に減り、経費が削減された。
  • 返却された樽の管理がスピードアップし、記録漏れもなくなった。
  • 樽を漏れなく管理できるようになったことが、正確でタイムリーな生産管理に貢献している。

クラフトビール界のトップランナーが抱えていた飲食店向け樽の紛失問題

「よなよなエール」に「水曜日のネコ」、「インドの青鬼」。ユニークなネーミングと印象に残るパッケージデザイン、そして何より個性のある豊かな香りと味わいで人気を博しているこれらのビールを製造、販売しているのが、株式会社ヤッホーブルーイングだ。軽井沢を拠点に、クラフトビールを日本に紹介しビール市場にバラエティを提供したいと、1996 年に設立された。

ヤッホーブルーイングのビールは浅間山の麓にある醸造所で造られ、全国に届けられる。缶やビンの製品に加え、飲食店向けには樽に充填され、ここから出荷されている。ヤッホーブルーイングで使用している飲食店向けの樽は、15 リットルと 7 リットルの 2 種類。どちらも底面の直径は 30 センチほど、15 リットルの樽の高さは約 30 センチで、7 リットルの樽の高さは約 15 センチだ。

この樽に関して、ヤッホーブルーイングでは大きな問題を抱えていた。飲食店で空になった樽はメーカーに返却されるが、返却が遅れる、誤って違うメーカーに返却されてしまうなどの理由で、樽が紛失し追跡できないのである。この問題を解決したのが、FileMaker プラットフォームのカスタム App だ。



バーコードを活用したカスタム App で月 20 個の紛失がほぼゼロにまで激減

株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
井手 直行 氏

カスタム App 導入の経緯を、代表取締役社長の井手直行氏は「弊社は自由な社風で、社員から FileMaker と iPad でいろいろなことができるので取り組みましょうと提案があり、さっそく扱い始めました」と語る。

株式会社ヤッホーブルーイング
経営企画担当
西川 季宏 氏

その提案をしたのは、経営企画担当の西川季宏氏である。以前は Excel のスプレッドシートで取引データを整理していたが、作業場では水を使うので PC を持ち込めない。作業場から離れた事務所で手入力しなくてはならないため、入力漏れや入力ミスが発生するほか、取引の履歴も追跡できないなど、管理の効果は低かったと西川氏はいう。そこで、樽に ID とバーコードがプリントされたシールを貼り、iPad に Bluetooth 接続したバーコードスキャナで読み込んで FileMaker で管理するカスタム App を導入しようと提案し、実現した。

樽に貼られたバーコード

カスタム App の導入により、どのような効果があったのか。以前は、1 か月に 20 個ほどの樽が紛失していた。ヤッホーブルーイングで管理している樽は 1 万個弱というから、相当な比率だ。それが、カスタム App の導入後は月に 1 個あるかないかという程度にまで減少したという。樽の価格はおよそ 2 万円。その分の損失がほぼゼロに近くなったということであり、カスタム App の導入により損失の減少に大きな効果があった。

1 回だけの使い切りの ID とラベルで管理の精度も業務効率も向上

バーコードスキャン

カスタム App での樽の管理は、次のようになっている。

飲食店などから注文を受けると、事務所で担当者が PC から基幹システムに注文内容を入力する。その後、その日に出荷する分の注文データを基幹システムから CSV ファイルとして書き出して PC 上の FileMaker Pro にインポートし、樽に貼るラベルをプリントする。ラベルには樽のサイズ、出荷先、ビールの種類、そして取引ごとに生成される ID とそのバーコードがプリントされている。倉庫でこのラベルを樽に貼り、出荷する。

使用済みの樽が戻ってきたら、ラベルのバーコードを Bluetooth 接続のバーコードスキャナで読み取って iPad 上のカスタム App に入力。これで樽が返却されたことが記録される。ラベルはこのタイミングではがす。取引ごとに異なる ID を使用するからだ。このために、簡単にきれいにはがせるタイプのラベル用紙を採用した。返却された樽の集積所では洗浄も行うので、iPad は防水ケースに入れて使用している。

株式会社 U-NEXUS
取締役セールスディレクター
横田 志幸 氏

樽の管理システムを Excel から FileMaker に変更した直後は、樽に固定の ID を付ける方法をとっていた。スプレッドシートより格段に効果が上がったとはいえ、これでもまだ不十分だった。その後、現在のように取引ごとに樽の ID を生成する方式に変更した。

ヤッホーブルーイングでは 10 種類近くのビールを生産しており、樽に充填されるビールは取引ごとに変わる。樽の出荷先も毎回異なる。樽にどのビールが充填されて、いつどこへ出荷されたのか、どの取引の時に返却されていないのかを正確に把握するには、取引ごとに異なる ID を使用するほうが理にかなっている。樽の ID が固定されていた時期には、充填時と返却時の 2 回、バーコードをスキャンする必要があったが、現在の方法にしてからは返却時にのみスキャンすれば管理できるようになった。

取引をする物品の動きに応じて ID の付け方とデータ管理を工夫すれば、管理の精度も業務効率も向上できることの好例と言えるだろう。このカスタム App の開発を手がけた株式会社 U-NEXUS の取締役セールスディレクター、横田志幸氏が「バーコードと iPad を活用した物品管理のニーズは多いものです」と語る通り、ビールメーカーの樽だけではなく、あらゆる業種の、あらゆるものの管理に応用できる。

特定の業務に特化し利用者の要望に短期間で応えることで使いやすいカスタム App を実現

ヤッホーブルーイングに導入されたこのカスタム App は、全社的なシステムではない。飲食店向け樽の出荷から返却までの管理に特化したものだ。このように、企業内の一部の部署や特定の業務に特化した使いやすいシステムを実現できるのは、FileMaker プラットフォームのカスタム App の大きな利点の一つである。

iPad のカスタム App 画面

返却された樽の管理業務を担当する充填ユニットの高畑健太郎氏は、「バーコードスキャナと iPad での作業は、操作がシンプルで、読み取りや表示のスピードも速く、重宝しています。この部署では高齢のスタッフも多いのですが、PC やデスクワークに慣れていなかった人もすぐに覚えて使いこなしています」と言う。

横田氏は「ヤッホーブルーイング様からのご相談を受け、FileMaker のシンプルさと iPad のモバイル性能の高さが樽の管理の問題解決に最適と考えました。樽のステータスをリアルタイムで管理、閲覧できるようになりましたね。開発期間が短く、また運用が始まってからのカスタマイズの依頼に対して迅速に対応できるのも FileMaker の利点です」と語る。

実際にこのシステムにおいても、iPad のカスタム App を使う充填ユニットから「機能やボタンの追加のほか、バーコードの読み取りを高速にして待ち時間をなくしてほしい、また必要な情報だけを表示した視認性の高い画面にしてほしいなどのお願いをしたところ、すぐに対応してもらえました」(高畑氏)と評価されている。

営業や受注、生産管理にもカスタム App の効果が波及

このカスタム App によって樽を管理する充填ユニットの業務の精度と効率が上がったが、樽を正確に管理できるようになったことは他部署にも良い影響を及ぼしている。

ビール製造風景

樽は平均して約 2 週間で戻ってくるが、長い時には 60 日程度かかることもある。出荷から返却までの樽の情報を正確に追跡できるようになったことで、営業担当者が先方へ連絡するなどの行動を適切にとれるようになっている。

法人受注担当の江原彩香氏は、カスタム App 導入の効果を「画期的だなと思いました。すでに樽を返却したお客様に問い合わせをしてしまうとたいへん失礼なことになってしまいます。今は確実にデータを蓄積し、樽で出荷した製品名や賞味期限も、樽が戻ってきたかどうかもすぐにわかります。出荷から樽の返却までの一連の流れが目に見え、全体像を把握できて効率がたいへん良くなりました」と語る。

さらに、紛失した樽を補充する経費が劇的に減少したことは前述の通りだが、効果はそれだけではない。樽の動きを把握できるようになったことが、生産計画にも貢献している。ビールの製造には麦汁を作るところから発酵、熟成と約 1 か月かかるため、これも重要なことだ。「樽の返却予定が正確にわかるので、社内の樽の在庫数を把握し、予想できます。したがって、どれぐらいの量のビールを造ればいいかを、効率的に無理なく計画できるようになりました」(西川氏)

一つのカスタム App の導入が他の業務へ、他社へと広がる可能性の扉を開く

カスタム App を導入して損失の削減や生産計画の正確さという目に見える成果が上がったことは、社員のモチベーションの向上にもつながっているという。

井手氏はこのことについて「FileMaker を取り入れたことにより、記録がきちんと残り、その記録をあとから見返すことで、新たな気づきがある。そこからいろいろなアイデアや提案が出てきてモチベーションが上がり、新しいことへのチャレンジにつながっています。スタッフみんなが喜んでいますね」と語る。

西川氏も同様に「樽をこのように管理できると社内に認知されたことをきっかけに、社員は FileMaker で今後できそうなことを考え、意欲を高めています」と言う。西川氏自身も「樽の管理だけでなく、生産管理にもカスタム App を活用していきたいですね。それと、樽を納入した飲食店に弊社のスタッフが出向いてメンテナンスをすることがあり、それもカスタム App で管理したいと考えています。訪問した日付や作業内容を記録したり、現場の写真を撮ったりしておけば、その後のメンテナンスに役立つからです」との構想を持っているそうだ。

今回導入された樽管理のカスタム App に関しても、さらなる展開がありそうだ。樽の紛失はヤッホーブルーイングだけの問題ではなく、中小のビールメーカーに共通の問題であるという。このカスタム App が劇的な効果を上げたことから、西川氏は「ほかのメーカーから多くの問い合わせを受けています。このシステムを広めていきたいと思います」と言う。

日本のクラフトビールの世界を牽引しているヤッホーブルーイングだけに、成長を続け業務は拡大している。「カスタム App を新しい工場や出荷場の追加などの計画に対応させたい」と言う西川氏に対し、横田氏は「それができるのが、FileMaker の良さですから」と FileMaker のスケーラビリティの優位性を語る。現在のシステムの拡張、新たな業務への展開、他社への広がりなど、ヤッホーブルーイングが目指すビールファンの幸せのために、FileMaker ベースのカスタム App がますます活躍しそうだ。

Close

株式会社ヤッホーブルーイング

FileMaker カスタマ・ストーリー

活用事例を見る