ATRAC(京畿道リハビリテーション工学サービス研究支援センター)

Assistive Technology service Research & Assistance Center

1 万名分以上の機器レンタル受付を iPad で管理。FileMaker プラットフォームの採用により古いシステムを刷新し、運用効率が 30% 向上、開発コストを当初予定から 50% 削減させた

ハンディキャップのある患者にとって QOL (Quality of Life) を向上させるためには、様々な支援器具が必要だ。福祉サービスを求める市民にベストな器具を高い品質で提供するための基幹情報システム "ATRAC-ERP System" を FileMaker ワークプレイス・イノベーション・プラットフォームで再構築した。

ATRAC(京畿道リハビリテーション工学サービス研究支援センター)

所在地

  • 韓国 京畿道* 水原(スウォン : Suwon)
  • *京畿道は約 1200 万人を擁する韓国で最も人口の多い州で「ソウルを囲む地域」という意味。日本でいえば東京を囲む埼玉県・千葉県・神奈川県であり、京畿道の州面積もこの 3 県を足した面積に等しいほど広大である。

施設概要

  • ATRAC は、京畿道 行政府の支援を受けて、2004 年に事業を開始。補助器具を必要とする 0 歳から 90 歳までのハンディキャップのある市民約 25,000 名に対して、南センター・北センターの 2 拠点で約 20 名の職員が介助支援相談や機器による支援の必要性の確認など、地方行政における福祉支援の一役を担うサービス提供を行なっている。

業界

  • 行政 NPO

概要

  • 2006 年から Visual Basic と SQL Server によるデータベース、2011 年からは Web ベースのシステムを使って、利用者と補助器具の管理を行なってきたが、FileMaker と iPad の導入により業務システムを一新。ペーパーレスを実現し 30% の作業を削減しただけでなく、データ分析も可能にした。

導入成果

  • 当初利用していた Web システムは、カスタマイズに制限があった。データは分散し、現場では 2200 ある商品アイテムの貸出状況を Excel データで管理していた。貸出状況は、メッセンジャーを活用しながら担当者が確認していたが、現場のデータがタイムリーに反映しきれず、機器が貸出中にもかかわらず在庫有として記録されたままになることもあった。FileMaker と iPad の導入により、リアルタイムな情報の反映が可能となり、データは一元化され、業務効率化が実現した。

システム構成

  • FileMaker Pro Advanced 10 台・FileMaker Go 15 台・FileMaker Server 1 台

ベンチマークテストで FileMaker に決定

韓国 京畿道の NPO 法人である ATRAC にて研究企画部門のチーフを務める Kwon SungJin(クォン・ソンジン)氏は、2006 年から利用者と補助器具の管理のため、Visual Basic と SQL Server で構築したデータベースによる第 1 次システムを使用してきた。 2011 年には Web ブラウザベースの第 2 次システムの運用を開始したが、業務ニーズの多様化、拡大にともない、器具の貸出情報やプロセスの管理に課題が出てきたため、改善したいと考えていた。 2017 年 3 月、2 次システムの運用開始から 6 年経過していたことから、新システムへの刷新に向けての検討を開始した。 そんな折、ノートルダム姿勢維持器具センターが、FileMaker 導入により業務の効率化に成功した事例を知り、同システムの開発者である Basil Code 社 Park JoonBae(パク・ジュンべ)氏に連絡をとり打ち合わせを行なった。 その結果、FileMaker をベンチマークテストの対象製品に加えることになった。 FileMaker は、入力されたデータの検索・閲覧が容易であり、Windows、macOS、iPad、Web ブラウザで利用できる点を評価。 またプログラムのコンパイル作業が不要なことからシステムの進化にも期待ができる点を評価した。 当時は、過去の要件定義に基づいて作成されたアプリケーションを使い続け、機能が足りない部分は現場の努力で補い Excel や紙で運用していた。 しかし、転記の手間が増えたり、データ管理ミスが発生したことから、FileMaker プラットフォームによる第 3 次システムに期待して導入を決定した。



現場での直感的な操作性を損わないシステムを目指して開発をスタート

FileMaker プラットフォームでシステムを再構築する際に気を配った点は、現場の要望を取り入れることだった。 ノートルダム姿勢維持器具センターにおいて実績のあるパク氏と、ATRAC 担当者 2 名がプロジェクトに入り、スタートから 3 ヶ月間で業務フローの確認と、一部業務の再定義を実施した。 開発プロジェクトは、業務フローの設計といくつかの単機能リリースを繰り返した後、最終的に 9 ヶ月ほどで完了。 現場のユーザを重視し、9 割の画面レイアウト構成を第 2 次システムと同じように再作成して、現場での直感的な操作性を損わないシステムを目指した。 FileMaker の新機能を画面遷移やビジネスロジックに活用し、一部の入力や検索は同センターに 15 台の iPad を配置して、作業の効率化に成功した。 同センターでは年間 900 件余りの申請相談が行政経由で入る。 当初は手書きで手続きを行なっていたため 1 件の処理に 30 分程度の時間がかかっていたが、現在はペーパーレス化により申込み後の相談状況や、ステータス管理も可視化され、業務の効率化に大きく貢献した。



現場で iPad を活用するには、アプリのテストを繰り返すことが重要

ATRAC 第 3 次システムの導入を支援したパク氏は、開発プロセスを進めるにあたり、開発中の画面を ATRAC のスタッフと共有して動作確認を行ないながら完成させた。 2017 年のプロジェクト開始当時は、業務プロセスの中で紙が使われていたが、FileMaker の特性を活かし、現場で iPad を使うことで紙をなくして業務プロセスを効率化できると確信した。 実際に現場で使える iPad 画面を開発段階で準備し、ユーザテストを繰り返し行なうことで、現場の意見を少しずつ反映して進化したカスタム App に仕上がった。




管理すべき情報量が増えても FileMaker であれば大丈夫

現在、同センターの利用者の 4 割が小学生以下の子供である。シャワー介助器具、起立補助器具、軽量車椅子などを支援しているが、器具の貸し出しの前には、人体評価が必要になる。 QOL を上げるためには、どの器具を提供し、成長に合わせてどのようにサイズ調整していくのかを確認し、利用者やその家族に対応して行政に報告しなければならない。 商品の種類は現在 700 アイテムにのぼり、2200 の貸出機器が登録されているが、この種類や区分も変化していくため、新しい情報の登録や、行政との調整をタイムリーに行なう必要がある。
FileMaker プラットフォームの導入により、システム変更が柔軟にできるようになった。システム上の制約から解放されることで、新しい商品企画や、導入支援方法についてもこれまで以上に踏み込んだ対応ができるようになることを期待している。


FileMaker の開発プロセスとプラットフォームの強みを理解したら、未来が見えてきた

FileMaker プラットフォームによる第 3 次システムの稼働から約 1 年を迎えた。 完成度、導入効果が非常に高かったことから、クォン氏は、さらに翌年に向けてシステム拡大を目指しているという。

FileMaker と iPad の導入により、元々業務が多くて管理できていなかったデータが一元管理され、管理指標となるデータが欠損なく収集蓄積されており、センターの効率的な業務運営に役立っている。 今後、機材の資産管理と修理記録を含めた統合管理システムを他の地域のセンターと共同利用できるようになることを計画している。

同センターは、京畿道行政府からの補助金と企業からの支援によって運営されている。 予算の制約などもあり、現在 800 名近い市民がサービスの提供を待っている状況にある。 FileMaker プラットフォームで構築したシステムは他の地域でもカスタマイズして利用できるため、一つの組織での成功に留まることなく、韓国全地域で利用することができる。 クォン氏は“IT インフラへの投資を抑えて業務過多にある行政サービスを効率化し、その分のリソースをサービス向上に充てていきたい”と今後の計画を語った。

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