KEN CLINIC

FileMaker プラットフォームで開発された電子カルテシステム ANNYYS は、国民皆保険制度が存在しない海外のクリニックでも効率的な運営に貢献

カンボジアで日本式電子カルテを導入し業務記録時間を短縮

医師だけでなく、事務部門の作業が大幅に削減

KEN CLINIC

所在地

  • カンボジア、プノンペン(#14A, St.370, Sangkat Boeng Keng Kong 1 (BKK1), Phnom Penh)

業種

  • 医療

概要

  • KEN CLINIC は、カンボジアの首都 プノンペンにて日本人医師が開業した外科・内科・小児科を標榜するクリニック。レントゲン、超音波検査、上部消化管内視鏡検査、血液検査等を行っており、産婦人科以外の医療全般を行っている。主な患者はカンボジア在住の日本人や、海外旅行で渡航中の日本人だが、現地のカンボジア人や外国人も多数。院長を務める奥澤 健 氏は、東京医科大学大学院を卒業後、スウェーデン・カロリンスカ研究所を経て、呼吸器外科専門医として日本国内の病院に勤務。2009年よりカンボジアに渡り 2010年にKEN CLINICを開業、現在、年間 約 4,000〜5,000診療を行っている。

導入効果

  • 開業当初は全て紙を使ってカルテ2号用紙(症状・処方)を基本に診療記録を患者ごとに手書きで記載していた。長年、患者データを紙カルテで保管してきたが、FileMaker プラットフォームと iPad の導入により、画像を用いた診療記録ができるようになっただけでなく、スタッフの事務処理に関する作業効率も向上した。

利点

  • 日本で一般的に導入されている電子カルテは、保険診療やオーダーリングがベースとなり電子カルテシステムがつながっているが、自由診療が基本の海外の医療施設での運用においては、医師の視点で診療行為をサポートするための電子カルテシステムが導入でき、電子カルテ(ANNYYS)を中心に画像システムや、検査機器のデータ取り込みが行われるため、作業効率や生産性の向上に役立っている。

システム構成

  • FileMaker Pro Advanced・FileMaker Go・FileMaker Server
KEN CLINICの奥澤 健院長

KEN CLINIC は、カンボジアの首都 プノンペンにて日本人医師である奥澤 健院長が開業した外科・内科・小児科を標榜するクリニック。レントゲン、超音波検査、上部消化管内視鏡検査、血液検査等を行っており、産婦人科以外の医療全般を行っている。同クリニックで看護師長として勤務する傍ら、事務部門を管理している 奥澤 麻美氏は、開院以来、院長をさまざまな面で公私ともに支えてきた。事務部門でなによりも大変だったのは紙での記録と転記だったという。紙カルテの保管には検査データも含まれるため、膨大な量の転記を手作業で行なっていた。特に、海外旅行保険に関わる保険金請求帳票の作成には多くの時間がかかり、患者数が多い日はスタッフの残業も日常的にあった。

2016年に電子カルテシステムANNYYS_Developer版(エニーズ・ディベロッパー版、以下、ANNYYS)を導入してからは、事務作業の時間が大幅に削減された。例えば、ここカンボジアでは下痢や発熱など似たような症状で来院されるケースでは検査オーダーも毎回同じになるが、以前に紙で記録していた場合には、毎回一つ一つを手書きで起票していたものを現在はワンクリックでセットオーダーが出せるため、作業量が劇的に減った。また、処方を電子化したことで患者の待ち時間も短縮。事務作業の負荷や時間が減ったおかげで、医師が患者に向き合う時間や、スタッフが患者と接する時間を増やすことができ、その結果、患者目線でのコミュニケーションが図れるようになり、時間的なゆとりはスタッフの暖かい気配りの源泉にもなっている。

さらに以前はバイタルサインも手書きしたものを医師に紙で手渡し、それを医師が紙カルテに転記していたのに対して、今では待合室でヒアリングした内容を診察前にスタッフが入力しておくことで医師の作業が不要になった。紙の時代には、患者が診察室に来るまでは患者の状況がわからなかったが、電子化されたことにより待合患者の症状や状況を事前に医師が把握することができ、高熱の患者を優先して診療するなど患者サービスが向上した。







画像診断に Apple の Retina ディスプレイと OsiriX 採用

奥澤院長は日本での勤務医時代にWindowsを利用していたので、カンボジアでもWindows端末と読影用のモニターを購入しようとしたが、現地で調達できるWindows向けソフトウェアの大半が海賊版であることに気付いた。大切な患者様の個人情報を扱うためセキュリティを軽視することはできない。そこで、2014年のクリニック移転時にX線医療機器導入を支援していた Cell Revise (大阪府) 代表の宮川広之氏に相談したところ、現地でも正規版の調達やメーカーによる交換修理が可能な Apple 製品を推奨され、高精細モニターである Retina ディスプレイ搭載の iMac と OsiriX(DICOM画像に特化した、macOS で動作する画像処理ソフトウェア)を導入した。また併せて、Digital Radiography (DR) にはキヤノン製のCXDI、放射線発生装置には島津製作所のEZy-Rad Proも導入した。




海外で利用できる電子カルテシステムのベンダー選定

奥澤院長は機器選定と平行して宮川氏にカルテの電子化についても相談した。開業からの4年間で紙カルテは相当な量となり、日々の患者数も増加傾向にあるなかで、紙カルテでの運用は、クリニック運営を担当する少数スタッフに大きな負担となっていた。日本国内の電子カルテは基本的に保険診療をベースに作られており、オーダーリングから派生する形で電子カルテシステムが作られている。自由診療が基本になる海外のクリニックでは、カスタマイズが必要になるが、海外での導入を支援してくれる電子カルテベンダーは少ない。電子カルテの選定を依頼された宮川氏は、(1) カンボジアの現地環境で運用できる英語UI対応が可能で、(2) 適正な導入コストで、さらに (3) DR画像の取り込みでは Mac との連携ができる、という3つの条件を満たす製品とベンダーを探す難題に取り組むこととなった。

FileMaker カンファレンス 大阪での出会い〜 カンボジアに一緒に来てください〜

宮川氏が日本に帰国した際、ちょうど地元の大阪で「FileMaker カンファレンス 2015」が開催されていることを知り、情報収集のため参加。日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)とファイルメーカー社の共催によるメディカルトラックにて 株式会社エムシス 代表の秋山幸久氏による電子カルテ事例の口演を聴講した。

「柔軟なカスタマイズで現場に最適な電子カルテソリューションANNYYSの導入事例」と題されたセッションを見終るやいなや、宮川氏の足は真っ直ぐに秋山氏の元へ向かっていた。「これや!これなら大丈夫や!」と心のなかで叫んでいたという。そして秋山氏に向けて開口一番、「カンボジアに一緒に来てください」と頼んだ。あまりに突然の申し出に秋山氏は一体なんのことだかわからず、ひとまず「はい、では機会があれば…」と挨拶を返したが、その数日後に宮川氏から熱い説得を受け、カンボジア訪問を快諾。ちょうど、東京オリンピックによるインバウンド増加に向けてANNYYS 英語版の開発にも組み始めていたところだった。

初めての訪問から6か月後には 電子カルテANNYYS が稼働開始

FileMaker プラットフォームをベースに開発されたANNYYSは「誰でも、どこでも、どのようにでも」という願いを込めて医師を含む開発メンバー6名の頭文字から命名された電子カルテパッケージシステムで、日本国内で数多くの導入実績がある。日医標準レセプトソフト「ORCA」との標準連携が可能である一方、自費診療にも対応するため、皮膚科などでも採用事例が多い。(参考:事例紹介記事「日下部形成外科・美容皮膚科 美容クリニックの自費診療や繊細な顧客管理をFileMakerベースで柔軟な構築が可能な電子カルテANNYYSで対応」)

秋山氏は、ANNYYSの開発メンバーの一人で、最初の“A”が秋山氏を指す。同氏が代表を務めるエムシスはANNYYS事務局の運営母体となっており、ANNYYSの普及に努めている。2015年に宮川氏から相談を受けた時点で既に日本国内での自由診療の実績もあるし、所見(SOAP)入力や帳票関連では同じなので、導入を楽観視していた。実際、ANNYYSは操作が簡単でカスタマイズも容易なことから海外のクリニックで必要なデータの準備さえ整えば、導入については全く問題がなかったという。しかしながら、問題はANNYYS以外の部分で多発した。移転先の建物の壁内に設置されたLANケーブルが正常に機能しておらず、KEN CLINIC の診察室・受付・処置室などでネットワークの再構築に想定外の時間を要したと苦笑いする。

一方で、KEN CLINIC で稼働開始してからの3年間、日本の病院では経験できないことが学べたという。「保険診療ではないので、改めて医師が使う電子カルテの本当の意義をレセコンと切り離して考える視点を持てました。また、現地で調達した周辺医療機器の仕様が日本のものと違い、個別の対応が必要だったり、臨床検査センターとの連携機能など、新しい試みもありました」と秋山氏は振り返る。臨床検査センターとはネットワークを介して連携する仕組みが構築されており、結果データをオンラインで受領して ANNYYS に自動で取り込める。ただ、日本のように検査会社が血液を回収にくる慣習がないそうで、「検体をどうやって臨床検査センターに送ったら良いか、カンボジアならではの方法を探って、奥澤院長や宮川氏と話し合いながら解決したのも非常に楽しい思い出です。カンボジアに来て本当に仕事が面白い」と秋山氏は笑顔を見せた。

FileMaker プラットフォームの魅力 は iPad

電子カルテへの移行は、診療記録の質向上にも大きく貢献した。例えば、iPad の活用である。ANNYYSは、iOS ユニバーサルアプリケーションの FileMaker Go に対応しており、iPad から直接サーバーへ画像の取り込みができる。しかも iPad 端末側にはその撮影画像が残らないため、患者のプライバシーを守りながら経過記録できることは大変有効であるという。セキュリティ面にはさらに格別な配慮を施しており、PIIデータを格納しているデータベースは FileMaker プラットフォームに標準装備のAES 256ビット暗号化処理を加えて運用している。

(左から)Cell Revise代表の宮川広之氏、KEN CLINICの奥澤健院長、株式会社エムシス 代表の秋山幸久氏

KEN CLINIC が、ANNYYS導入にあたり最も重視したのは、既製品の電子カルテを導入することで却って作業量が増えてしまうような事態を避けることだった。医師・看護師・事務部門の全員が、システムに使われないシステムを納得して導入することを最優先に考えたという。

ANNYYS は2007年の初版以降、毎年進化し続けているが、ここカンボジアの地においても、立場の異なる三人のメンバーの知恵と努力によって新しい知見を得て、導入3年で大きな Workplace Innovation に成功し、 KEN CLINIC の効率的な運営を支えている。

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