北見市医療福祉情報連携協議会
北まるnet

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『ケアビジョン 2019 vol.2』(発行元:株式会社インナービジョン)に関連事例記事が掲載されています。お手元の掲載誌をぜひご覧ください。また、オンラインで innavi net の記事もお読みいただけます。
地域医療と介護をつなぐ『北まるnet』
協議会の取り組みと北まるnetの現状とこれから
FileMakerプラットフォームによる地域連携ネットワークの構築

地域の限りある医療・介護資源の有効活用へ
FileMaker による医療・介護情報連携システムで実現

FileMaker プラットフォームによる DASCH Pro 上で稼動する
医療介護情報連携システム、介護認定審査会システム、救急医療情報 Pad

北見市医療福祉情報連携協議会

所在地

  • 北海道北見市幸町 3 丁目 1-24
    北見医師会内

業種

  • 医療・介護・福祉

概要

  • ICT を活用した医療福祉情報コミュニティ創りを目指して、北見市医療福祉情報連携協議会を発足。医療・介護・福祉関連事業所が地域住民に対して効率的な各種サービスを提供することを目的に医療介護情報連携ネットワーク「北まるNet」を構築し、運用している。北まるnet は FileMaker プラットフォームを基盤に開発された DASCH Pro を採用し、医療・介護の現場ニーズに沿って、医療・介護情報連携システムをはじめ、介護認定審査会システム、救急医療情報 Pad など各種アプリケーションを追加開発してきた。地域住民の安心・安全な暮らしを支えていく基盤として、限られた予算ながら将来にわたって継続的な運用を見据え、成長を続けるシステム基盤を目指している。

導入効果

  • 医療・介護情報連携システムによって、医療機関からケアマネジャーへの退院時連絡率を 40% から 80% に向上。ケアマネジャーの業務効率と利用者サービスの向上に貢献している。また、医師や看護師と介護職の情報連携・共有が確実になったことで、関係者全員が協働して患者・利用者をケアできる環境が整備された。
  • 救急医療情報 Pad の運用では、現場到着後に救急隊員と施設担当者双方が短時間に医療情報を確認し合うことが可能。救急患者受入先の病院は、搬送患者の情報を事前に把握でき、迅速な疾患の予測・検査や治療準備が可能になった。
  • 介護認定審査会システムの運用では、介護認定審査に必要な資料の提出・配布に関する作業負荷と郵送コストの削減。審査会に出席する委員の移動時間がなくなり、効率的な審査会の実施が可能になった。

限りある医療・介護資源を ICT で有効活用

北見市医療福祉情報連携協議会会長
北見医師会会長
今野敦氏

北海道北見市は、オホーツク海沿岸から石北峠まで東西約 110 キロメートルに及ぶ北海道で最も広大な地方公共団体である。人口は約 11 万 7000 人(2018 年度末)で、各地の地方都市同様に年々減少を続ける一方、高齢化率は上昇し、約 33% となっている。そうした地域情勢の中で中核病院をはじめとする医療機関は市の中心である北見自治区に偏在。限られた医療資源を有効に活用した体制づくりが求められていた。

「医療従事者や医療施設不足の地域状況は非常に深刻で、多職種が協働して提供する医療介護サービスに必要な情報の円滑な連携が喫緊の課題です。北見市民の安心・安全な暮らしを支えるための情報連携基盤を構築しようと、北見医師会、北見工業大学、各職能団体に呼びかけて立ち上げたのが、北見市医療福祉情報連携協議会です」。現在の北見市医療福祉情報連携協議会会長で、北見医師会会長の要職にある今野敦氏は 2011 年に協議会を発足した背景をこう話す。

協議会は、ICT の活用をベースに「北見市の医療介護資源の最大活用」「医療介護における地域包括ケア体制の構築」「市民自身による主体的な健康増進への喚起」を使命に掲げた。事業目標としては、健康医療情報共有のための情報基盤の構築し、その上で地域連携クリニカルパスの運用や健診データの管理、脳卒中・糖尿病・CKD(慢性腎臓病)・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性疾患における診療連携のためのデータ管理、さらに介護福祉分野での共有情報の利活用、救急医療における共有情報の利活用、お薬手帳・処方せんの電子化、薬局での服薬指導に関する共有情報の利活用などを目指した。

特に、当初から介護分野での情報共有、医療機関との情報連携の仕組みを確立することを重視した。その背景には、退院時に病院の医療ソーシャルワーカーからケアマネジャーへの情報提供するケースは約 4 割で、半数以上の患者の情報が伝えられないまま介護に移行する現状があったという。こうした課題や経緯を踏まえて構築したのが、医療・介護情報連携ネットワーク「北まるnet」だ。




FileMaker ベースの DASCH Pro を採用

北見市医療福祉情報連携協議会
システム構築専門部会長
田頭剛弦氏

北まるnet の開発にあたって、様々な課題および事業目標に基づいて機能を検討した。ただ、スタート時からそうした機能を実装したうえ最適なシステムを見極めるは難しい。そこで、運用しながら関係者で協議を重ね、柔軟に反映できるシステムが求められた。初期費用が抑えられ、ユーザーによる変更や機能追加が可能なプラットフォームとして採用されたのが FileMaker だった。

当時、北海道の FileMaker 開発パートナーである DBPowers が FileMaker プラットフォームをベースに脳卒中疾患を中心に急性期から回復期の医療機関連携を実現するシステムが稼動実績を積んでいたことから、同社が北まるnet の構築を担った。DASCH Pro に着目した背景を北まるnet のシステム構築専門部会長 田頭剛弦氏は次のように話す。

「限られた構築資金で、かつセキュリティ機能を担保したシステムを短期間で構築する必要があったことから、北海道地域連携クリティカルパス運営協議会で運用実績のあった DASCH Pro を候補に検討しました。医療情報の共有だけでなく、患者さんの生活や身体機能などの付帯情報も共有でき、掲示板機能も併せて医療と介護の橋渡しとなるケアマネジャーをはじめとする介護関係者とのコミュニケーション環境を整備できることを高く評価しました。また、FileMaker 上で動作しているので、事業を展開していく際に拡張性のあるところも魅力でした」(同氏)。FileMaker アプリケーションが医療機関で多数の運用実績があり、協議会の中にも自院でカスタム App を開発・運用しているメンバーが複数いたことも採用を後押ししたようだ。

DBPowers 代表取締役
有賀啓之氏

医療・介護情報連携システムは、今でこそ各地でベンダーが提供するプラットフォームが稼動しているが、協議会自らが設計・開発にかかわる事例は多くない。そこで、北まるnet の構築では、(1)多くの組織が参加できること、(2)複数年にわたり継続的に参加でき、継続運用が可能であることだった。患者の医療情報や生活情報の共有、参加する多職種メンバー間のコミュニケーション機能などを実装している DASCH Pro だが、北まるnet の開発では医療と介護のシームレスな連携を支援できることを重視したという。その点について DBPowers 代表取締役の有賀啓之氏は、「利用する多職種のスタッフが必要なときに必要な情報を必要な形で提供するところに注力しました」と述べている。

医療・介護・福祉の多職種連携がスムーズに

北見市役所
地域医療対策室主幹
山下修一氏

北まるnet の中核的なシステム基盤である医療・介護情報連携データベースは、診療情報と付帯情報の共有・連携を担う。診療情報は、病名、処方・注射、検査結果、患者サマリー、診療情報提供書、リハビリ、食事情報などが含まれる。一方、付帯情報は、看護、介護、認知、嚥下などの病棟や在宅における生活情報、基礎 ADL や自立度などの日常機能活動情報、家庭環境や社会参加に関する情報など。医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーによる介入情報、掲示板による関連施設とのコミュニケーション機能などがある。具体的なアプリケーションとしては、医療・介護情報連携システム、救急医療で活躍する救急医療情報 Pad、介護認定審査で活用される介護認定審査会システムなどがある。

医療・介護情報連携システムは、患者ごとに権限を付与された医療・介護機関が情報を登録・閲覧し、掲示板機能を用いてコミュニケーションを図ることができる。医療機関とケアマネジャー間の退院調整では、北まるnet を活用することで、医療機関からケアマネジャーへの退院時連絡率を導入前の 40% から 80% に向上したという。ケアマネジャーにとって、病院への問い合わせに対して同日中に返信をもらうことができることは、自らの業務効率と利用者サービスの向上につながる。また、医師や看護師に伝えてほしいことや診察・検査の結果についても、直接連携できることでスムーズ・確実な情報共有が可能。関係者全員の安心につながっているという。

救急医療情報 Pad は、北まるnet の医療介護連携システムに登録された患者情報(病名、服薬、緊急連絡先など)を救急隊員が携行する iPad で参照するもの。「北見市は高齢者が多い地域。普段はかかりつけ医療機関に通院している高齢者が、症状が急変して普段は通院していない救急病院へ救急搬送されることが問題でした」(北見市役所 地域医療対策室 主幹の山下修一氏)という対策として開発された。

救急医療情報 Pad では、救急救命士が搬送先を選定する際の支援情報となる緊急連絡先、かかりつけ医、病名、服用履歴などの情報を医療・介護情報連携システムから転用し、集約表示している。介護施設に出動したケースでは、現場到着後に救急隊員と施設担当者双方が短時間に医療情報を確認し合うことが可能。一方で、救急患者受入先の病院では、搬送されてくる患者の情報を事前に把握することができる。北見市の“地域医療の最後の砦”として多くの救急車を受け入れているのが北見赤十字病院。脳神経外科 部長の木村輝雄氏は、北まるnet のメリットを次のように話している。

北見市医療福祉情報連携協議会副会長
北見赤十字病院脳神経外科部長
木村輝雄氏

「ほかの医療機関にかかっている患者の情報は、ほとんどないことが多い。北まるnet の情報をリアルタイムに参照できれば、どんな症状で運ばれてくるのか、あるいは以前にどこの病院を受診したのか、現在どんな薬を飲んでいるのかを知ることができます。おおよその疾患の予想はできますし、それに対応した検査や処置・治療の準備を事前にでき、迅速な急患対応が可能になります」。

一方、介護認定審査会システムは、要介護度を決定する審査会を効率的に進めることを目的に構築された。従来は、主治医意見書やケアマネジャーによる認定調査票の市介護福祉課への提出、介護認定審査会事務局が審査会メンバーへの同資料の配付など、すべて紙ベースで行っていた。構築したシステムでは、審査会委員がクラウドサーバーからダウンロードした介護認定審査会の資料を iPad で事前に閲覧・修正し、所属の事業所にいながらにして、パソコン上に映し出された他委員の顔と資料を見ながら審査を行うことができる、ペーパーレスの Web 会議システムである。資料の提出・配布に関する作業負荷と郵送コストは削減され、委員は審査会のたびに集まる必要がないため移動時間がなくなった。特に医師の委員からは、診療の妨げになる移動時間が削減されたことで高く評価されているという。

継続運用を前提に成長し続けるシステム

助成事業を利用して構築した北まるnet は、稼働して 8 年が経過した。ここまで紹介したシステム・機能はフェーズ 1 の段階から徐々に構築・実装してきたものだ。継続性を重視して始めた事業だが、そのためにもシステムの更新が必須で、特にセキュリティ面の更新は個人情報を守る上で喫緊の課題。全国で多くの医療情報連携ネットワークが助成事業で構築されたものの、運用コストや改修コストを調達できず、停止に追い込まれるケースも多い。しかし、北まるnet は医師会と市が中心となって運営していることもあり、市の予算で 2019 年 4 月にシステムの改修が実現できたという。

また、新たに医療機関とケアマネジャーの入退院連携を促進するため、入院時情報提供書システムを構築するなど、北まるnet は成長を続けている。それは継続的な運用を維持する重要な要素であり、医療・介護サービスのシームレスで効率的な提供を推進している。「地域住民が生きがいを持って支え合いながら、安心・安全に暮らせる町づくり。その重要な基盤となり、新たな創意工夫を生み出すネットワークとして北まるnet を関係各所と協力しながら大きく育てていきたいと考えています」。今野氏は北まるnet への意気込みを話す。

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