国立病院機構 大阪医療センター

ビデオを見る

連携医療機関のインターネット外来予約、災害時の電子診療記録として威力を発揮する FileMaker プラットフォーム

連携先医療機関の利便性を向上させた FileMaker Cloud によるインターネット外来予約。
熊本地震で有効性が確認されたユーザーメードによる電子災害診療記録。

独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター

所在地

  • 大阪市中央区法円坂2-1-14

概要

  • 電話やFAXによる地域医療機関の外来予約は、予約する医療機関・患者および窓口となる地域医療連携室のスタッフそれぞれに手間がかかり、不便さがつきまとった。FileMaker Cloud によるインターネット外来予約は、外来予約の業務を効率化し、利用者・患者の利便性を向上させた。
    一方、電子災害医療診療記録システムは、これまで標準化されていなかった災害現場での診療記録を、1分1秒を争う場面でもスピーディーに入力することを可能にした。また、J-SPEED(日本版災害時診療概況報告システム)に対応し、被災地の医療概況をリアルタイムに把握するための情報を迅速に収集・集計することにも寄与する。

業種

  • 医療

概要

  • インターネット外来予約:FileMaker Cloud を利用することにより、地域医療機関はWebブラウザ FileMaker Go から大阪医療センターの診療科、予約日時をリアルタイムに予約確定できる。予約操作は配布されたアカウント情報でログインしたのち、1画面で診療科、予約日時、患者情報(性別・生年月日)の入力を可能にしている。
  • 電子災害医療診療記録システム:紙の災害診療記録の表紙(1号紙)、一般診療用(あるいは軽症用)、外傷用、2号紙(一般診療用・外傷用共通)の各様式を、「患者情報」「内科/軽症」「外傷/所見」「処置/検査」に区分し、それぞれをタブで分けた一画面で記載できるようにした。また、医療救護チームが、診療した被災者の年齢や性別のほか、発熱や傷、ストレス症状の有無など26項目をチェックし1日分を集計でき、プリントアウトした情報を災害対策本部などにFAX送信できる。

導入成果

  • インターネット外来予約:紹介患者の外来予約をする地域医療機関の手間を削減し、紹介患者の利便性を向上。大阪医療センター 地域医療連携室スタッフの予約確定にかかわる業務負担を軽減。
  • 電子災害医療診療記録システム:紙ベースの標準化された災害診療記録をスピーディーにシステムで記録可能になった。トリアージタグの情報を引き継げる診療録の形式であり、将来的にはDMATの医療搬送カルテとして位置付けられる可能性がある。

地域医療連携を強化・推進

大阪医療センター
医療情報部長/産科医長
岡垣篤彦氏

国立病院機構 大阪医療センターは、政策医療分野におけるがん、循環器疾患、難病、エイズ、救命救急、災害拠点病院としての基幹病院であり、高度総合医療施設である。病床数694床を持ち、1日の外来平均患者数は1000人を超える。

また、地域医療支援病院として地域医療機関との連携を強化・推進しており、年間約2万人の紹介患者を受け入れ(紹介率73%)、2万6000人の患者を連携医療機関に逆紹介している(逆紹介率97%)。この地域医療連携の推進のために、専属の担当者や医療ソーシャルワーカー(MSW)が配置された地域医療連携室が設置され、専用の電話およびFAXによって、地域医療機関からの診察予約や医療相談、退院支援や調整、他院・他施設との連絡・調整などの業務を行っている。従来の電話・FAXによる連携手段に加え新設されたのが、FileMaker Cloud を利用したインターネット外来予約である。

これまで地域の医療機関から紹介される患者の診療予約は主にFAXで申し込み、日時を調整したうえ折り返しFAXで返信していた。しかし、予約取得までにある程度の時間がかかり、その場で予約日時を決定できず、診療予約する医療機関はあらためて確定した日時を患者に連絡する必要があるなどの課題があった。

そこで考えられたのがインターネット外来予約だが、究極の個人情報を扱う医療機関にとって外部からアクセスされるインフラを医療機関内に設けることは、非常にハードルが高い。専用のネットワークを敷設する必要もあり、強固なセキュリティを確保したシステムを構築し、安全な運用を維持する必要があるからだ。

FileMaker Cloud は、セキュリティを要求される通信プロトコルにTLS1.2が使われ、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」のオープンなネットワークを介した通信要件に準拠。また、このインターネット外来予約システムでは患者の個人情報を取り扱わないように設計するなど、安全面では特に万全を期している。

院内にプラットフォームを持たず、安全なインターネット予約を可能にする手段として FileMaker Cloud を採用しました。また、診療科ごとに異なる予約時間の調整や休診などの設定を各診療科で行えるような仕様にする必要があり、こうした要件を満たすシステムをベンダーに開発依頼すると多額の費用が発生します。FileMaker を基盤として自ら開発することで、安価でありながら安全なシステムの構築・運用が可能になりました。

― 大阪医療センター 医療情報部長/産科医長 岡垣篤彦氏


夜診の時間帯でも予約可能に

越田クリニック
副院長
山田成利氏

構築したインターネット外来予約システムは、非常にシンプルなインターフェースと仕組みで、診察予約する患者名を入力せず、極力安全にクラウド利用できるようにした。

まず、登録した地域医療機関は配布されたそれぞれのアカウントとパスワードを入力してログインする。このインターネット外来予約システムは FileMaker Cloud 上にホストされており、利用者はWebブラウザからでも、iOS デバイス上の FileMaker Go アプリケーションからでも、PCの FileMaker Pro ソフトウェアからでもアクセスできる。受診申し込み画面で予約開始ボタンをクリックして表示される画面ですべての予約申し込みができるシンプルさだ。

FileMaker Pro ソフトウェアはすでに所有している医療機関も多く、また FileMaker Go やWebブラウザは無料で利用できるアプリケーションであるため、利用者側の負担は非常に少ない。利用の普及を目指す上でも、費用がかからないこと、誰でもすぐに使えるわかりやすい操作性であることは大きな意味がある、と岡垣氏は言う。

一覧から予約する診療科を選択すると、予約可能な日にちおよび時間枠が表示されるため、希望する日時を選択。あとは患者の性別と生年月日のみを入力すれば予約登録は完了する。


1画面で診療科、予約日時、紹介患者の入力ができ、予約確定がその場で可能になった。拡大表示

このインターネット外来予約を利用している生殖補助医療(不妊治療)を専門とする越田クリニック副院長の山田成利氏は、その場ですぐに予約が確定できることが大きなメリットだと話す。同クリニックで不妊治療を受けている患者の多くが仕事を持っているため、午後5時~8時の夜診に訪れる人が圧倒的に多い。妊娠に成功した人を産科病院に紹介する際に、夜診時間は紹介先医療機関に連絡がつかない時間帯のため、電話はもとよりFAXで予約を申し込んでも予約確定は翌日以降になる。

「以前は、確定した予約日時を伝えて予約票を渡すためだけに後日に再来院してもらう必要がありました。今はインターネット外来予約で夜診の時間でも予約確定が可能になったので、その場で予約票を渡すことができるようになり、患者さんへの負担がなく、私たちも手間をかけなくて済みます」(山田氏)。

災害現場の診療記録を電子化

大阪医療センター
前救命救急センター診療部長
定光大海氏

大阪医療センターでは、災害派遣医療チーム(DMAT)などが利用する電子災害医療診療記録システムも FileMaker プラットフォームを利用して構築している。同システムは、これまで電子化がまったく進まなかった被災現場での診療記録業務を大きく変える画期的なシステムと言える。

大阪医療センターが電子化した災害医療診療記録の仕様は、日本救急医学会、日本診療情報管理学会、日本病院会、日本医師会、日本集団災害医学会の5団体で作成した「災害診療記録」に基づいている。かつては、災害派遣された医療班で利用する診療録の様式や運用ルールは各医療班で独自のものが使用されていた。そのため、医療班同士の診療の引き継ぎや、診療録から医療情報が抽出できずリアルタイムな対応に支障をきたしていたという。「災害診療記録は、国内の災害時で標準的な診療記録として作られたもので、今後標準的に使われていくものです。災害時に最初に記載されるトリアージタグの情報を引き継げる診療録の形式であり、広域搬送拠点臨時医療施設や拠点病院の救護所などで使用され、DMATの医療搬送カルテにつながるもの。また、災害時の疫学的なデータ集積のためのツールにもなります」。2018年3月末まで救命救急センター診療部長を務めた定光大海氏は、5団体で作成した災害診療記録の意義をこう説明する。

救護所の救急外傷と慢性疾患にも対応

大阪医療センター
救命救急センター医長
上尾光弘氏

開発した電子災害医療診療記録システムは、大阪医療センターの救命救急センターで運用している FileMaker ベースのER経過記録システムを基にしている。紙の災害診療記録の表紙(1号紙)、一般診療用(あるいは軽症用)、外傷用、2号紙(一般診療用・外傷用共通)の各様式を、「患者情報」「内科/軽症」「外傷/所見」「処置/検査」に区分し、それぞれをタブで分けた一画面で記載できる。

また、紙の災害診療記録では不可能な複数回の診察時に所見や評価、処置入力のたびに入力フォームへの入力が可能なうえ、それぞれ入力内容が画面右側にまとめられ時間経過とともに表示される。「特に避難所での内科診察では一人の患者が何度も診察を受けるケースは多く、診察する医師は毎回変わるのがほとんど。その都度、所見や処方を容易に入力でき、かつ前回診察時のカルテ内容が一目で把握可能なところが、電子災害医療診療記録システムの有意な点です」(救命救急センター医長 上尾光弘氏)。

さらに電子災害医療診療記録システムは、被災地の医療概況をリアルタイムに把握するために必要な情報を迅速に集計する仕組みであるJ-SPEED(日本版災害時診療概況報告システム)にも対応する。医療救護チームが、診療した被災者の年齢や性別のほか、発熱や傷、ストレス症状の有無など26項目をチェックし、当日のデータを瞬時に集計して災害対策本部に報告できる。



外傷/所見画面は、外傷初期診療ガイドラインのフローに従い、所見をチェックボックスで入力。拡大表示
慢性期疾患患者などにも利用される内科/軽症画面では、一般診療用の記載項目の他、外傷とも併用するJ-SPEED項目も収載した。
拡大表示

災害時の情報伝達の混乱を回避

災害を想定したシステムとして、災害掲示板システムもユーザーメードで開発し、災害訓練で試用している。災害発生時には医療機関内に立ち上げた災害対策本部に、トリアージ部門や治療、病棟部門などからさまざまな情報が集約される。各所からトランシーバーなどを通じて入ってくる情報を掲示板に手書きして状況把握や伝達が行われるが、誰が何をどの部署に伝えようとしているのか混乱することが多い。そこで、災害掲示板システムに各部門から伝達したい情報を一方的にアップする仕組みを開発した。発信時刻、発信者、内容と写真も送れる。情報の入力を簡便化するため、音声入力も利用されている。

同システムを災害訓練で使用したところ、伝達経路が安定して、各部署における役割が明確化し、業務の全貌がすべての部署で把握可能になったという。特に対策本部には本部が把握すべき重要な情報のみが確実に伝わり、発信者から伝達すべき部署への情報は直接伝わるようになり、情報伝達の混乱が回避されたという。

電子災害掲示板は、発災時の災害拠点病院内での情報伝達や共有を行うためのシステム。Twitterなどのソーシャルメディアと同じような方式で、各部門がタイムラインに必要な情報を発信することで容易に情報共有を可能にする。

Close

国立病院機構 大阪医療センター

FileMaker カスタマ・ストーリー

活用事例を見る